将来募集困難が深刻化、定着率低下、志願制維持困難
10月17日付 Defense-News は、10月中旬の米陸軍協会総会でChristine Wormuth陸軍長官が、陸軍土官とその家族を犠牲にした現在の「数年に一度の転勤」は、陸軍と各兵士のために本当に必要なのか?新兵募集が困難になり、兵士の定着率が低下する中で続けることが可能なのか?志願制の維持が可能なのか?・・・について真剣に考えるべきだと高級幹部に訴えたと報じています
同長官は、「今、軍を去る土官の大半が、より安定し、予測可能で、より良い家庭生活を求めている」、「配偶者を無給の陸軍労働力として扱い、そのキャリア形成の犠牲の上に成り立っている。子息に降りかかる教育の機会喪失等の犠牲も見過ごせない」等と現状の問題点に触れ、
「米陸軍は、兵士とその家族のキャリアの柔軟性、安定性、予測可能性を高めるアイデアを真剣に検討する必要があり、それには異動の頻度を減らすことも含まれる可能性がある」と語っています
更に同長官は、「テレワークで戦争せよと言っているのではない」、「軍生活すべてを一か所で過ごすモデルを考えよと言っているのではない」と前置きしつつ・・・この問題を過去数年間かけ調査し、議論してきた中で出た様々な対策オプション例を挙げ、陸軍全体で考えるべきだと訴えました
●移動を3年毎ではなく5年毎に減らす
●適切な将校を選抜し続けながら、任務を広げる柔軟性を持たせるために、将校のキャリア基準と昇進基準を修正
●職種変更の選択肢を増やし、軍を離れずに新しいキャリアパスを追求しやすくする
●階級在籍期間に厳密に基づくのではなく、責任、資格、仕事の成果と金銭的報酬をよりよく一致させる方法追及
軍側は「作戦上のニーズを満たし、空きポスト埋めるため現在の転勤制度が必要」との主張を過去から展開しているようですが、米国防省と軍人家族の両方にコストを課す「頻繁な移動」が本当に必要かは長年疑問視され、最近ではメンタルヘルス面を含む健康面から、軍医療関係者からも疑問の声が上がっているようです
もちろん同長官も「改革の多くは複雑で、追加的な資金と議会の協力も必要になる」と認めていますが、「陸軍が直ちに検討しなければ、10~15年後には募集課題が深刻化し、定着率が低下し、志願兵制の存続が脅かされることになる」と強い懸念を訴えています
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軍人、特に指揮官たる土官の育成は、様々なポストを経験させることが柱となっており、地理的に分散して配置することが求められる軍部隊の特性もあり、「転勤」は避けがたいと考えられています。
これは世界の軍隊共通の認識だと思います。 同長官は「陸軍が提供するライフスタイルは、インターネットが発明される前からあまり変わっていない」とも表現し、意識改革を軍人指導層に求めたようですが、認識を変えるには時間がかかりそうです。しかし、志願者が減り、定着率の低下も待ったなしとなれば・・・。全世界の軍の課題です
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