米空軍大改革の最難関はICC創設とその運営

新規装備の構想から開発計画を担うICC立ち上げに苦悩か
戦闘機族・爆撃機族・輸送機族のしがらみ克服が課題か

ICC2.jpg8月14日、Allvin米空軍参謀総長が米空軍協会機関紙とのインタビューに対し、今年2月に打ち出された米空軍大改革の状況について触れ、改革の柱とも考えられる、新規装備品の構想から開発計画管理までを一元的に担うICC(Integrated Capabilities Command)を創設し、従来この役割を担ってきた戦闘コマンドACCや輸送コマンドAMCや世界攻撃コマンドGSCから同役割を分離する改革が最も困難だと述べています

2月12日の空軍協会Warfare Symposiumで、Kendall空軍長官とAllvin参謀総長によってコンセプトが打ち出された米空軍大改革の方向性は、まんぐーすの整理では以下の3点に集約されます

1.将来装備品の構想や開発計画を新コマンドICCに集約
●新規装備品の導入構想や要求性能や開発計画専従の「将来体制を検討する専門コマンド:ICC:Integrated Capabilities Command」を中将トップで創設し、従来この役割を担ってきた戦闘・輸送・CSコマンドは日々の作戦運用とそのための即応態勢維持に集中させ、戦闘機や輸送機や爆撃機の将来構想検討から距離を置かせる

AFFORGEN.JPG2.戦闘・空輸・CSコマンドは戦いと態勢維持に集中
●戦闘・輸送・CSコマンドの戦闘能力強化のため、冷戦期の手引きを復活させ、コマンドの枠を超えた大規模演習や事前通告なしの戦闘能力点検を復活させるなどに取り組む。この際、基礎単位の航空団Wingを前方展開即応部隊や基地機能維持部隊等に区分し、各Wingへの要求を明確に区分してメリハリのある戦力造成を行う。また、各部隊の前線派遣と母基地での訓練や休養のサイクルを新AFFORGENとして再整理&再構築する。

3.ACE構想を全ての基準として一貫した教育体系を
●教育訓練では、ACE(Agile Combat Employment)構想の実現を教育訓練体系の共通重点目標とし、同構想を遂行可能な多能力を備えた兵士育成に空軍全体として取り組み、新兵教育から上級教育までを含めた一貫した体系で実現する

Allvin22.jpg以上の3つの内、「2.と3.」項目については既に具体的な計画に沿って部隊改編や演習訓練&検閲が開始され、新AFFORGENに沿った戦力の管理ローテーションも順次段階的に始まっているとAllvin大将はインタビューで語っていますが、「1.」のICC創設については、米議会への説明も含め、逆風に直面するかもしれない今後実施すべきことが多く残されていると示唆し、明確な言及を避けつつも以下のように語っています

Allvin大将はICC創設に関し・・・
●ICC創設と司令部創設には米議会から承認が必要で、注目を浴びることになる。現在我々は議会に説明する準備作業を進めている

●(5月時点で同大将は、ICC司令部で当初は5~800名が勤務する予定で、早期に業務に取り掛からせたいが、物理的な引っ越しには時間が必要なため、当面は現所属(ACCやAMCやGSC等)の所在地からリモート勤務で業務を行うと語っていたが・・・)今のところ、今後3~6か月以内にICC暫定司令部を設置し、従来その役割をACCやAMCやGSC等の各機能コマンドで担っていた幕僚要員から、ICC司令部に所属変更になる幕僚に担わせる。議会説明を含む総合的な要件に取り組む機能を開始しなければならない。

ICC3.jpg●ICC司令部要員が、現所属のACCやAMCやGSC等の各機能コマンド勤務地からリモート勤務することで、現所属組織とICCとの間の「摩擦」が生まれやすくなるとの意見もあるが、実際に任務に従事しているACC等の司令部と近接することで意思疎通や情報の入手が容易になり「近さには価値がある:there is value in proximity」との見方もできる。最終的に幕僚要員が一か所に集まれば解決するだろう

●ICCは、期待している役割のほんの一部から始めるだろう。成熟するにつれ、時間と共に拡大することを目指す。拡大実行するペースは現実的に考えている。米空軍は依然として新規装備品開発のプロセス(Program Objective Memorandum budget process)に沿い、効果的な空軍近代化を進める必要があり確実にする必要があり、その方法について非常に慎重に検討している
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Kendall AFA2024.jpgAllvin参謀総長は5月1日の記者会見で、ICCを2024年末までに立ち上げると語っていましたが、8月14日のインタビューでは「今後3~6か月以内にICC暫定司令部を設置」と年末までの創設が危うくなっているほか、「ICCは、期待している役割のほんの一部から始めるだろう」とも述べ、米空軍内からの反発や各方面との「摩擦」が相当あることを伺わせています

11月の大統領選挙の結果にもよりますが、この改革、特にICC創設をライフワークの集大成として打ち出した剛腕Kendall空軍長官(政治任用)の2024年末での退任も予期され、早く形を固めてしまわないと、ICCの未完や骨抜き創設も懸念されるところです

米空軍が大改革アクションを発表
「大改革の概要発表」→https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/
「改革の目玉ICCコマンド」→https://holylandtokyo.com/2024/05/23/5873/

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