偶然中東での画像が流布しその存在が明らかに
Too MuchなMQ-9より安価で損耗を苦にしない
まず4機を導入し、将来はアジア太平洋でも
7月2日付DefenseOneが、米中央軍がUAE基地に展開中の画像を「うっかり」流布させたことからその存在が明らかになった、DZYNE社製造の連続80時間飛行可能な無人偵察機ULTRA(Ultra Long-Endurance Tactical Reconnaissance Aircraft)について取り上げ、その航続性能からアジア太平洋戦域での活用も視野に置く同社CEOの話などを紹介していますので取り上げます
今年5月にどのような形でULTRAがUEAのAl Dhafra空軍基地で撮影され、その画像が流通したのか把握していませんが、同機は米空軍研究所AFRLと協力して約8年前から研究開発が始まっていたようですが、米国防省主導の「small business innovation research program (SBIR)」との枠組みで、2025年度予算で4機を約53億円で調達(地上管制や整備関連機材や部品を含む価格と推測)することになっているようです
機体は写真でご紹介しているような形状で、コストを抑えるため一般販売されているスポーツ用有人グライダー機体を改良したものだそうですが、偵察器材など約180㎏の最大ペイロードで、空中給油等無しで80時間連続飛行が可能な性能を持ち、例えば東京駅から離陸すると、約2000nm(3600㎞)離れた南シナ海ど真ん中付近で「丸一日」哨戒偵察飛行が可能な能力を持つそうです
現在は写真を撮られた米中央軍担当エリアやアフリカ大陸で活動しているようですが、アフリカでの根拠飛行場確保が難しくなる中、イタリア国内から離陸してサハラ砂漠一体のアフリカ北部全体を偵察範囲としてカバー可能な能力を持つことから、大いに重宝されているようです
ULTRAが開発された背景には、元々無人攻撃機として開発された1機45億円のMQ-9では運用コストや撃墜された際の損失が任務に比して「Too Much」で、現実にはMQ-9の「飛行時間の僅か数%しか」攻撃任務に使用されていない「無駄の垂れ流し状態」を解消するため、より調達や維持運用コストが安価なアセットへの要求が前線部隊で非常に大きくなっていることがあるようです。
今回DefenseOneの取材を受けたDZYNE社CEOのMatt McCue氏は、作戦運用根拠基地が少ないアジア太平洋地域では活用可能な航空偵察アセットが限定されるが、中東やアフリカ戦域での運用経験を踏まえ、アジア太平洋のような環境でこそ我が社のULTRAが真価を発揮するとして、米軍や国防省にアピールしたいと語っています
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画像から「スポーツ用グライダー」改良品であることがご理解いただけると思いますが、商用部品の使用で機体価格や維持運用コストは相当に抑制できるでしょうが、機体にステルス性があるわけではなく、相当の損耗率も覚悟する必要がありそうです。
1機45億円のMQ-9と比較すれば・・・ですが、ULTRAだって1機5~10億円くらいするんじゃないでしょうか
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