ずさん過ぎる次期ICBM計画の米国防省再承認

計画のMilestone B承認取り消し再検討を2年以内で
コストは31%増ではなく現時点で81%増
増加分は米空軍負担が原則
ただしコスト増が発生する5年後以降までに対処検討

LaPlante ICBM.jpg7月8日、コスト超過と開発期間遅延で法律(Nunn-McCurdy Act)に抵触し、米国防省が再検討を求められていた次期ICBM計画(Sentinel計画:GBSD計画とも)に関し、LaPlante調達担当国防次官が記者会見を開き、本計画に対する2020年9月の「Milestone B承認」を取り消し、今後1年半から2年で計画全体を再検討した後に再度「Milestone B承認」審査を行って計画を適切に管理していくとの国防省案を説明しました

LaPlante ICBM4.jpg同次官は説明会見で、2020年9月「Milestone B承認」時点でのICBM発射地下施設や地上管制システムに関する知見が不十分であったため、コストや開発期間の適切な見積もりが米空軍や国防省内で出来ていなかったことがNunn-McCurdy法に抵触した原因で、その後に明らかになった現状等を踏まえて計画管理をより適切に行うと語りましたが、現時点でコスト超過は1月時点での37%から81%にまで膨らみ、計画遅延も少なくとも2年から「少なくとも3年」になると明らかにしました

つまり、本計画の当初予算は約11.5兆円でしたが、法抵触を報告した1月時点で予算が15.7兆円に膨らみ、現時点では21兆円にまで膨らんでいるという信じがたい状況です。米空軍の年間予算が総計で5兆円台ですから、空軍予算の2年分の超過コストが発生すると平然と説明したわけです

LaPlante B-21.jpg当然記者団からは「天文学的な数字のコスト超過分をどのようにカバーするのか?」との質問が出ていますが、これに対しLaPlante国防次官は「とりあえず今後5年間はコスト超過分は発生しないから、検討の時間はある」、「再度Milestone B承認を行う1年半から2年後までや、実際にコスト超過が発生する5年後以降までに、コスト超過原因箇所の再精査&&検討やトレードオフの対象となる他空軍プログラムを検討する」と、信じがたいレベルの「問題先送り」「後任者負担」説明を行いました

LaPlante ICBM3.jpg米空軍幹部も、例えばHunter空軍調達担当次官が「本計画継続のためにどのようなトレードオフを行う必要があるかは、ずっと先の判断になるだろう」とか、「空軍省内にNuclear Oversight Committeeを立ち上げ、戦略爆撃機やICBM事業や作戦運用に関する監督を強化する」とか、「本計画専従のprogram executive officer(PEO)を配置した」とか、「Air Force nuclear weapons centerトップを少将から中将に格上げする」とか、仕事をしたような「ふり」をしている状態です

次期ICBM計画のNunn-McCurdy法抵触を受けた米国防省の「計画再承認」は以上のような信じがたいレベルの「問題先送り」でお茶を濁していますが、これを受けた米議会はどのような姿勢を示すのでしょうか・・・? 恐らく「米空軍を中心とした再検討の結果を見て・・・」等の「判断先送り」になりそうな気がしております。それにしてもひどすぎます。

超巨大次期ICBMシステム整備の苦悩
「国防次官もあきらめムード」→https://holylandtokyo.com/2024/06/05/5929/
「米空軍だけでは対応不可能」→https://holylandtokyo.com/2024/03/01/5591/
「法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「長官が苦悩&不安を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

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