NATOの9か国戦闘機が丸1日Gunのみ空中戦訓練

多国籍F-16,F-35,Typhoon,Rafael,Tornade,F-18等が1対1
相手が誰かは未知で、30分間のエリア時間のみアサイン
37機が67ソーティーで目視範囲内の空中戦だけを
欧州アフリカ米空軍司令官の「ご発案」らしいですが・・・

Ramstein 1v1.jpg6月6日、ドイツのRamstein米空軍基地で9か国から戦闘機7機種以上が参加し、8時間にわたり戦闘機搭載機関砲だけを使用する異機種空中戦に絞った演習「Ramstein 1v1」が初めて行われ、米空軍協会web記事が11日付で取り上げていますので、様々に突っ込みどころ満載の訓練をご紹介しておきます。

Ramstein 1v13.jpg訓練「Ramstein 1v1」は、欧州アフリカ米空軍司令官であるJames Hecker空軍大将の着想や問題認識(以下は各種報道のトーンから一部推測紹介)、「異機種の空中戦闘は基礎中の基礎。今はレーダーやミサイルの発達で目視範囲外での空中戦が中心だが、目視範囲内のGun使用戦闘は航空機特性を把握する上での基本中の基本」

「俺の若いころはNATOの各国空軍間の作戦機の往来や訓練が頻繁にあり、意思疎通が盛んだった」「互いに訓練することで相互理解が深まり。NATO同盟の基礎となっていた」「戦闘機乗りが将来は各国空軍トップになるのだろうから、中尉から少佐レベルから交流しておくことは有意義」等々を背景に9か月前から準備されたとのことです

報道ベースの訓練概要など・・・
●参加国空軍と参加機首(機種は報道された範囲のみ。機数不明)
Ramstein 1v16.jpg・参加国と参加機首→米国(F-16、F-35、F-18?)、英国(F-35、Typhoon)、独(Typhoon、Tornade?)、仏(Rafale)、オランダ(F-16、F-35)、ベルギー(F-16)、ノルウェー(F-35)、フィンランド(F-18)
●訓練空域は50nm X 70nmの空域を4分割した4つのエリアで、各空域で1対1の「ガンのみを使用」した高度1万フィート以上での空中戦を実施

●事前に安全上の訓練規定などを各国参加者に徹底した後、当日朝、参加パイロットは割り当てられた「守るべき担当ポイント位置」、「割り当て時間(30分間)」、「コールサイン」、「管制周波数」のみを知らされ訓練に参加する。対戦相手国や機種は事前に知らされない
●割り当て時間に担当位置に到着したパイロットは、発見した相手の機種等に応じ、自身の操縦する機体の特性を踏まえた戦術を即座に判断し、Gunのみ使用の空中戦闘を行う。参加各パイロットは約2回の訓練機会が与えられた模様

Ramstein 1v12.jpg●通常は輸送機を担当することが多いRamstein米空軍基地の整備員は、各国の戦闘機の受け入れや燃料補給等々を通じ、他機種への対応能力を向上させ、米空軍全体の方針であるACE構想遂行能力を向上させた。
●ノルウェー空軍F-35の再発進準備などを米空軍兵士が担当する等、戦闘機のNATO内での相互運用性向上訓練の機会も設定された

参加パイロットの感想
Ramstein 1v155.jpg●独空軍大佐→約20-30年前に経験して以来の久々の貴重な学びの機会だった。私がF-4ファントムの乗っていた頃を思い出した。NATO同盟を発展させるために必要な試みだ
●英空軍F-35操縦大尉→仏ラファールやフィンランドF-18と初めて訓練することができた。空中で相手を発見して識別し、その場で最適な戦術を判断する極めてエキサイティングで貴重な体験だった。とても緊張した
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ドイツのRamstein米空軍基地は、米本土外で最大の米空軍基地で、基地近隣には軍人やその家族約5万人が生活する「Kaiserslautern Military Community」が形成され、これまた米本土外で最大規模の軍医療機関「Landstuhl Military Medical Center」を擁していますが、戦闘機は配備されておらず、7機種37機もの各国戦闘機が突然展開して1日中飛び回ったことで、基地を囲むフェンス沿いには、カメラを構えた見物者が多数集まりごった返したとのことです。

Ramstein 1v14.jpg今、欧州各国は、ウクライナへの支援をどうするか、極悪非道の限りを尽くすロシアへの対応をどうするかで悩ましい選択を迫られています。提供する弾薬が枯渇し、支援資金が限られた国防費や国家予算を圧迫する中、各国国防省や政府中枢は厳しい選択を日々を迫られています。また欧州各国は、行き過ぎた移民政策や環境政策の反動として招いた、極端な「右寄り政党」の台頭の真っただ中にあります

そんな中、ウクライナ問題で貢献していない欧州各国の戦闘機部隊が集まって、空中戦に特化した、しかもGunのみの空中戦で基本を・・・との発想に驚かされます。この「Ramstein 1v1」訓練に招かれた報道機関は、「STARS AND STRIPES」とか「米空軍協会機関紙」とかの「御用記者」だけのようで、さすがに欧州米空軍広報部も少し対外アピールを控えたのかもしれませんねぇ・・・司令官肝いりの特別訓練でしょうが・・・

米空軍参謀総長や副参謀総長が、「航空優勢」重視の考え方を再考すべきとの発言を繰り返しているにもかかわらず、Hecker空軍大将のような退役までカウントダウンの指揮官が変化を妨げているんでしょうねぇ・・・。同盟国空軍まで巻き込んで・・・

航空優勢に関する考え方の変化
「重要だが不可能だし必要もない」→https://holylandtokyo.com/2024/06/07/5938/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→ https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

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