半年後の4月19日に米空軍が曖昧ぼんやり発表
複数本格空中戦で何回勝利かなど細部には触れず
試験目的は「重要な戦闘局面でのAIの信頼性確認」と
4月19日、AIによる自立飛行試験用に改良されたF-16戦闘機VISTA(Variable In-flight Simulator Aircraft)を運用する部隊幹部等が、国防省研究機関DARPAとともに取り組んできた空戦革新プログラム(Air Combat Evolution (ACE))関連で、2023年9月にVISTAと有人F-16戦闘機の間で空中戦飛行試験を様々なパターンで実施し、AI搭載無人機が空中戦等で安全に確実に飛行できることの確認に向けた検証を行ったと明らかにしました
これまで米空軍は、F-35等の墜落を防ぐ「自動地上衝突回避システム(Auto Ground Collision Avoidance System)」導入等において、既存ルールを事故防止目的で徹底するため自立型AIを活用してきましたが、「操縦者が従事する最も危険で予測不可能な飛行形態」で「操縦者にとって最も難易度の高い能力の一つ」である「有視界飛行での空中戦」を自立型AIに実施させることで、米空軍内にAIへの信頼感向上を狙ったものだと関係者は説明しています
同日付Defense-Newsは空軍発表について
●4年前に開始した空戦革新プログラム(Air Combat Evolution (ACE))では、当初コンピュータシミュレーション上で、自立型AI搭載戦闘機と人間が操縦する戦闘機が相対することで自立型AIの成熟を図ってきた。自立型AIに実飛行時の安全ルール制限を付加していなかった状態での飛行対決も含め、当時の対戦成績は五分五分だった
●2022年12月と2023年9月にVISTAに自立型AIを搭載した実飛行を計21回行い、2023年9月には約2週間に渡り、有人F-16戦闘機と本格的な空中戦飛行試験を複数回実施した。ただし、本格空中戦試験で、VISTA(緊急時の安全確保のため操縦者搭乗)が有人F-16に何回勝利したかなど、細部については空軍関係者は明らかにしなかった
●本格的な空中戦飛行試験では、飛行安全上の確認や配慮から、最初はVISTAに防御的な空中戦機動が必要なVISTAに不利な状況設定から飛行試験をスタートし、段階的にVISTAによる攻撃的機動を伴う場面に設定を変えていき、有人F-16との「nose-to-nose passes」や垂直機動を伴う飛行や、相手との距離2000フィート以内や時速1200マイル(2150㎞)での攻撃的な機動も飛行試験も実施された
●本プログラムでのVISTAと有人戦闘機の対決飛行試験から得た教訓は順次AIの成熟改良に反映されており、今後も様々なシナリオ設定で有人機との対戦飛行試験が計画されている。試験は単にAIの空中戦能力向上を目指しているのではなく、無人ウイングマン機CCA実現などを含む「AI技術への空軍内の信頼度を高める」目的で、今後も継続すると空軍関係者は語っている
●しかし「将来の無人戦闘機部隊の編制につながるのか?」との質問に対しACEプロジェクト関係者は、そのような長期的計画に関する質問は空軍指導層にしてほしいと回答するにとどまっている
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末尾の過去記事では、空戦革新プログラム(Air Combat Evolution)開始の4年前は、シム環境でAIと現役バリバリ操縦者が2020年夏に対決して「5-0」でAIが圧勝とか、2021年7月には実機を用いてAI操縦者と人間操縦者の空中戦試験を予定との発表をご紹介していますが、当時の「盛り上がり」に比し、その後の米空軍関係者の本プロジェクトに関する「曖昧」「ぼんやり」「ロープロファイル」な姿勢に大きなギャップを感じています
「Air Combat Evolution」プロジェクトは2020年に開始され、3年計画で2023年春終了の予定だったと記憶していますが、この辺への言及がないのも不思議です。まんぐーすの邪推ですが、恐らく、2020年頃の盛り上がりに「有人戦闘機命派」が反発し、「世に誤解を与え、有人戦闘機不要論を高める懸念アリ」などと不満を訴え、現在のロープロファイルかつ半年遅れの対外発表になったものと考えます
ただ、4月9日にKendall空軍長官が議会で、「(時期は未定ながら)VISTAに自ら搭乗して自立型AI開発状況を確認する」と宣言して大きな話題(5月2日に搭乗済!)になるなど、ロープロファイル希望の有人戦闘機命派にとっては、向かい風がますます強くなりそうで、メシウマです!
無人機空中戦検討プロジェクト
「VISTAで自立AI総合検証試験へ」→https://holylandtokyo.com/2024/04/26/5788/
「22年12月コッソリAI無人機飛行試験」→https://holylandtokyo.com/2023/02/27/4326/
「8企業がAI空中戦で有人F-16に挑む」→https://holylandtokyo.com/2020/08/19/528/
「米空軍研究所は2021年に実機で」→https://holylandtokyo.com/2020/06/10/620/
「空中戦用AI開発本格化」→https://holylandtokyo.com/2020/05/22/678/