10 月以降の戦いの教訓をソフトと運用法改善に
次展開予定の空母戦闘群も既に新ソフト&戦術で訓練
紅海の MD センサーには厳しい自然環境を克服し
3月21日付Defense-News記事は、紅海での2023年 10 月 19日の米イージス艦によるフーチ派巡航ミサイル3発の迎撃成功以降、フーチ派無人機への対処を含む様々な交戦経験が、米海軍の SMWDC(少将指揮官の水上・機雷戦開発センター: Surface and Mine Warfighting Development Center)を中心に、米海軍の多様な部署(Naval Surface Warfare Center や Naval Information Warfighting Development Center)と企業や大学研究機関も含めた緊密な連携により、艦艇機材やソフト改修、運用要領の修正 に迅速に生かされ反映されていると紹介しています
中国やロシアとの本格紛争を想定した対処の基本は不変だとしながらも、高温多湿で海面状況や大気の状況がミサイル防衛や無人機対処に厳しい紅海の環境への対応や、フーシ派保有装備や行動パターンを分析して前線部隊に対応要領を助言したり、派遣準備中の部隊への準備訓練に迅速に反映する様子が参考になりますので、作戦や装備性能に関連する事項で細部は不明ですが、取り上げさせていただきます
各方面との緊密な連携
●上記で紹介した、SMWDC を中心とした米海軍内の情報部門を含む複数部署や、ロッキード社と Johns-Hopkins 大学応用物理研究所の知見を持ち寄り、現有イージス艦装備の特性や機材設定パラメータレベルにまでさかのぼり、フーチ派無人機やミサイル運用の特性を踏まえ対処を検討
●SMWDC、艦艇の乗組員、打撃グループのリーダー、第5艦隊のリーダーなどが参加する連携調整 会議を毎週開催し、SMWDC が推奨する友軍戦術の変更、敵行動の変化や気づき事項、敵情把握のための艦艇システム設定の新手法、緊急の教訓を共有徹底
●毎週の連携調整会議では、各部署の各種センサーや戦闘システムが収集したデータだけでなく、各 持ち場でどのように兵士や組織が行動したか、マニュアルが適切かの視点も含め何が起こったかを 「storyboard」として持ち寄り、連携改善に役立てる意見交換実施
迅速なソフトアップデート
●SMWDC を中心とする広範な戦訓分析かた抽出されたソフト用改修箇所は、大規模なイージス戦闘 ソフト改修を待つことなく、小さな改修を迅速投入する仕組み「Aegis Speed to Capabilty process」 を設けて更新をスピードアップており、すでに一部の艦艇には無人機対処の改修ソフトが搭載され、「機能の大幅な向上」が見られたと報告されている
迅速な展開予定部隊への教訓戦術展開&訓練
●SWWDC は数計を現地に展開予定の部隊に説明するだけでなく、現実に想定されるシナリオを踏まえた高度な水上戦術訓練として準備し、実際リンカーン空母戦闘群は過去6か月間の教訓が満載の 訓練を実施して最終展開準備中である
●SMWDC 司令官は具体的な戦術修正の内容について言及を避けたが、「紅海は大気や海面反射等の関連から、レーダー運用が最も難しい地域であり、その環境で如何にレーダーシステムを設定するか非常に難しい」と述べ、捜査員のレーダーパラメータ設定に関する部分が教訓や戦術変更に含まれている模様である
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イスラエル VS ハマス戦争から派生した紅海での「フーチ派巡航ミサイルや無人機との戦い」ですが、既にご紹介したように「艦艇垂直発射管 VLSへのミサイル洋上補充の重要性」や「無人機対処エネルギー兵器の重要性」を改めて浮きりにし、 仏海軍艦歴に「初のミサイル迎撃成功」の機会を提供するなど、少なくない影響や教訓を西側国家群に提供しています。
ロシアや中国との本格紛争を備える過程で、このような実戦経験を生かす取り組みは極めて大切と言えましょう。ただ西側メディアが厳しい視線を向けていますが、米軍等の迎撃ミサイルが1発3~6億円で、フーチ派の無人機がせいぜい30~60万円であることから、100倍のコスト負担を強いられているという現実が、改めてクローズアップされているのも事実です
フーチ派対処からの教訓
「艦艇垂直発射管 VLSへのミサイル洋上補充」→ https://holylandtokyo.com/2024/03/26/5669/
「無人機対処エネルギー兵器」→https://holylandtokyo.com/2024/03/28/5678/