Counterspaceの訳が「宇宙攻撃」で適切かは疑問ながら
昨年創設の第75及び第76 ISR Squadronを語る
1月5日、米宇宙軍の作戦部長であるDeAnna M. Burt中将がミッチェル研究所で講演し、米国にとっての「Counterspace:宇宙攻撃」任務の重要性について力説し、全ドメインからの情報収集を基に、敵宇宙アセットの想定攻撃目標や敵宇宙脅威を常続的に分析してファイリングしている、宇宙軍が昨年立ち上げた「第75及び第76 ISR Squadron」の任務をアピールしていますのでご紹介します
背景には、例えば中国は既に地上に物理的衛星破壊兵器、レーザー兵器、サイバー能力や電子戦兵器を配備し、今はさらに宇宙空間に電子妨害機能やレーザー兵器のほか、ロボットアームを備えた衛星を配備する準備を進めている現状への強い危機感があり、
このような宇宙脅威の中で、米国はもちろん「宇宙における国際行動規範確立」、「敵の攻撃に対処可能な強靭な宇宙システムの開発」、「宇宙状況把握能力の向上」にも取り組む必要があるが、現状で限定された「Counterspace」能力しかない米国にとって、「強力なCounterspace能力確保」が欠くことができない重要要素だとの米宇宙軍関係者の信念があります
一般に「Counterspace:宇宙攻撃」任務は、単に敵の衛星を無効化するだけではなく、敵の宇宙アセットを構成する3要素(衛星と地上の管制装置とその2つを結ぶ信号)に作用しての友軍に有利な状況を生み出すことを指し、そのためには普段から常続的に、敵の宇宙アセットのどの部分に作用すれば、政治・経済・安全保障等の総合安全保障の観点から最適かを分析し、リストとして準備しておくことが望まれます
Burt中将(女性)は2つの部隊について
●2023年8月11日に編成完結した75th ISR Squadronは「space target」に焦点を当て、その直後に立ち上げられた75th ISR Squadronは「space threats」を重視する部隊である
●「space target」重点の75th部隊は、「宇宙空間の衛星だけでなく、地上管制施設、通信送受信施設、電磁波による通信信号、光ファイバー施設などなど」の攻撃対象オプションを常続的情報収集から分析検討し、オプションとして何時でも統合任務部隊に提供できるように準備することが任務
●「space threats」重視の76th部隊は、信号情報に限らず、人的情報や他の収集手段もフルに活用した「all-source intelligence部隊」で、75th部隊の準備する「space target」情報も情報ソースとして活用し、様々な視点で友軍への宇宙関連脅威情報を分析&提供する
●なお、第75と第76 ISR Squadronは「Delta 7」に所属しているが、作戦時に「Delta 7」の情報を活用して指揮統制を行う「National Space Defense Center」は、「Delta 15」部隊によって運用されている
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例えば中国が相手のケースを想定すると、中国大陸内部の衛星管制施設を爆撃やミサイル攻撃で物理的破壊することがエスカレーションの危険等から総合的に難しい場合は、サイバー攻撃もオプションになるでしょうし、それが困難であれば衛星との通信を妨害したり、衛星に直接作用する手段を最適オプションに推薦することも考えられます
なお、宇宙空間での衛星無効化手法としては、「衛星への物体衝突」「通信電波妨害」「レーザー光線」「化学物質吹き付け」「高出力マイクロ波照射」「ロボットアームでの破壊」などが考えられている模様です
米宇宙軍のCounterspace部隊と活動
「初の攻撃オプション検討部隊」→https://holylandtokyo.com/2023/08/23/4970/
「米宇宙軍初の攻撃兵器CCS」→https://holylandtokyo.com/2020/04/14/725/