国防省の担当特別補佐官中佐が論文
再生可能エネルギーや蓄電や管制施設完備で
米陸軍は2035年目標に全基地に基盤整備目指す
10月31日付米空軍協会web記事が、米国防省のNathan Olsen担当特別補佐官(中佐:開発研究次官の配下)による秋号「Air & Space Operations Review」誌への投稿論文「Microgrid」を取り上げ、米軍の海外駐留基地がホスト国の電力供給に依存している現状に危機感を訴え、海外基地がホスト国に依存しない独自の再生可能エネルギー発電装置やミニ原発、蓄電能力や制御装置を備えた「Microgrid」を早急に整備すべきだと訴えています
軍事基地にとっての電力の重要性は言わずもがなですが、ウクライナでのロシアによる電力施設集中攻撃による社会危機や、ハリケーンなど自然災害で電力会社からの電力供給が停止して基地機能が停止した米本土基地事例が最近増加しており、多くの米軍基地が保有する1週間程度の化石燃料使用の現状の自家発電能力では、本格紛争は戦い抜けないとの危機感を同中佐は訴えています
米軍の海外基地がホスト国から「電力面で独立」するためにOlsen中佐が主張している「Microgrid」整備とは、海外基地の地理的な特性に応じた再生可能エネルギー発電(太陽光、風力、バイオマス、地熱発電)やコンテナサイズの「ミニ原発」を蓄電装置とセットで整備し、
それら多様な発電源を基地ニーズに応じて最適制御する管制装置でコントロール可能な仕組みの確立を意味しており簡単ではありませんが、「脅威の最前線」にありながらほとんど自衛隊基地に関して議論されていない分野ですので、注意喚起の意味を込めご紹介させていただきます
同中佐が紹介の具体的事例の一部
●再生可能エネルギー発電(太陽光、風力、バイオマス、地熱発電)については、「気候変動対処戦略」に沿って、各軍種や各基地で少しづつ取り組みが始まっているが、期待の高いコンテナ1台で基地一戸全ての電力を提供可能な「ミニ原発」は技術進歩も著しく、2027年にはアラスカのEielson空軍基地で先行試行使用が開始される計画
●同中佐の基準で既に「Microgrid」が導入されているのは、(中国脅威最前線の)米空軍横田基地、(ハリケーンで大打撃を受けた)フロリダ州のTyndall空軍基地、そして様々な代替電力の組み合わせで3週間の運用可能な体制を構築している海兵隊Miramar航空基地(映画トップガンの舞台@加州)のみで、より積極的な投資が国防省や米議会には期待される
●米軍の中では陸軍が最も積極的で、ミサイル防衛装備やロケット開発発射試験場に活用されている南太平洋マーシャル諸島の「Kwajalein Island」で、太陽光発電や他の発電設備による「Microgrid」運用を行っているほか、陸軍全体で2035年までに「Microgrid」を全基地に導入完了し、2040年までに再生可能エネルギー発電と蓄電設備で主要な任務活動をすべて賄える態勢整備完了する目標を掲げている
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Olsen論文掲載の「Air & Space Operations Review」秋号
→https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/ASOR/Journals/Volume-2_Number-3/ASOR_Volume_2_Number_3..pdf
再生可能エネルギー発電(太陽光、風力、バイオマス、地熱発電)は、不安定、量的に不十分、特定地域でのみ可能な発電手段で、基地レベルの電力安定確保には「ミニ原発」しか方法はないように思いますが、精密誘導兵器大拡散の現状で普及が難しいのが現状です。ではありますが・・・まずは防衛省・自衛隊でも議論を立ち上げて頂きたいと思います
Olsen中佐が取り上げた米空軍横田基地の「Microgrid」はどの程度のレベルのものでしょうか? 論文のいい加減な斜め読みでは「Yokota」「Tyndall」「Miramar」の名前を発見できず、ご紹介できないのですが、空自の横田基地勤務の皆様でご存じの方にご教授いただければ幸いです
ミニ原発や気候変動の記事
「空輸可能ミニ原発を契約」→https://holylandtokyo.com/2022/06/20/3344/
「航空輸送可能なミニ原発配備へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/19/3147/
「ミニ原発反対論」→https://holylandtokyo.com/2021/06/29/1960/
「サイバー停電に備えミニ原発」→https://holylandtokyo.com/2020/03/11/779/
「国防省の気候変動対策」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/