豪州が北部重要港湾の中国へのリース継続決定

豪中親密時の2015年に締結の99年リース契約
豪州政権交代で再検討も結論は契約継続
7年ぶり豪首相の中国訪問前に(米訪問もあるが)

Darwin Port2.jpg10月20日、豪州政府は2015年に当時の保守系自由党政権が中国企業と締結した北部の重要港湾ダーウィン港の99年間リース契約について、労働党への政権交代を機に契約継続の是非について再検討を行ってきましたが、安全保障上の問題はないと結論付け契約を継続すると発表しました

契約は山東省に拠点を置く港湾施設企業「山東Landbridge Group」と結ばれていますが、ダーウィン港を管轄する地方政府(Northern Territory政府)が多額の負債を抱えた状態で港湾施設老朽化が問題となっていたタイミングで、かつ中国と豪州関係が最も緊密だった時期に締結され、同中国企業は豪州内投資家を圧倒する約480億円の港湾施設改修投資も約束して「ダーウィン港99年間リース契約」を獲得しています

Darwin Port5.jpg2015年当時の豪州は保守系自由党のターンブル首相政権で、クワッド体制や日本の安保法制整備を強く支持し、中国の南シナ海埋め立てに強い反対姿勢を示していましたが、一方で「豪州の国益を棄損しない限り中国の台頭を歓迎する“現実主義的”親中の立場」からダーウィン港のリースを推進し、当時のオバマ米大統領から「なぜ事前に相談しなかった」と苦言を呈されています

その後、当時の対中蜜月関係は悪化の一途をたどり、2022年の総選挙を経て、当時「ダーウィン港のリース」に反対した中道左派の労働党がアルバニーズ首相の元で政権を担っており、昨年の政権交代後に同契約の再チェックを同首相が指示しましたが、結局10月20日に改めて契約継続方針が示されることとなりました

Darwin Port7.jpg折しも、アルバニーズ豪首相は23日の週に訪米&バイデン大統領との首脳会談を控え、更にその後11月に豪州首相として7年ぶりの中国訪問が計画されている中での決定で、豪首相としても容易な決定ではなかったであろうと想像できますが、これが現在の豪州政府の立ち位置です

豪州国防省や豪州情報機関は、「ダーウィン港のリース」による中国企業活動は、豪政府が確認済の規定に沿って行われ、安全保障上のリスクには当たらないとの公式見解を出していますが、

Darwin Port3.jpg豪州シンクタンク研究者は「(対中国を見据えた米国など同盟国戦力の展開拠点となる北部豪州の重要輸送インフラである)ダーウィン港に中国企業が存在していることで、豪中関係に緊張が高まった場合にどのような影響が出るかは予想もできないリスク要因であり、そのようなリスクを受け入れるべきではない」と主張しています
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2015年当時、中道左派野党の労働党が中国系企業の関与に反対する中、保守系の自由党政権が米国の反対を押し切って実現した信じがたい99年間のリース契約で、自由党のターンブル首相の息子が中国共産党幹部の娘と結婚するような当時の状況も併せて考えると、たった8年前のこととは信じがたい時代です

Darwin Port8.jpg中国経済が崩壊する中、今後中国と仲良くしても良いことはないと思うのですが、豪州産ワインへの220%関税の見直しを中国が発表したようです。労働党アルバニーズ豪首相は岸田首相のように、とりあえず目先の安定や利益だけを考えて決断したのでしょうか?

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