露軍需産業の象徴?音沙汰無しS-500防空システム

2018年にプーチンが生産開始指示との報道
2021年モスクワ圏納入も音沙汰無し
2022年量産型出荷の契約だが・・・

S-500 Prometheus3.jpg10月5日付Defense-News記事が、極超音速兵器迎撃も視野と言われてきたロシア企業Almaz-Antey製の新型防空ミサイルシステムS-500(通称Prometheus)に関する「音沙汰無し」状況について報じ、ウクライナ侵略や西側からの経済制裁によって疲弊する、ロシア軍事産業の象徴するかのような「尻すぼみ」状態を紹介しています

S-500は、現有S-400システムが射程約400㎞と言われる中で、射程約600㎞で高度200㎞の目標にも対処可能なシステムで、極超音速兵器にも対応可能との触れ込みで開発が進められ、2010年に開発が開始、2011年には専用の2工場建設に着手し2016年に完成、プーチン大統領が2018年には量産開始を要請したと報道されていた新兵器です。

S-500 Prometheus.jpgこの新兵器には複数のミサイル(航空機や巡航ミサイル用の40N6Mと、弾道ミサイル対処用の77N6シリーズ)が搭載可能で開発され、その性能は米国のTHAADを上回り、なおかつS-400より小型で機動展開等が容易だと西側研究機関や専門家は分析していました

実際にS-500は2019年に製造開始され、2021年には首都モスクワ周辺防空を専任担当する部隊に納入されたと報道されました。同時に、2022年納入予定で10個大隊用製造の契約が企業と締結されたとも報道され、その後の動向に西側軍事筋が注目していました。

S-500 Prometheus2.jpgしかしその後はS-500に関する高官の言及や報道が無くなり、製造企業のAlmaz-Antey社を含むロシア軍需産業全体に、西側による経済制裁による電子部品を中心とした部品不足や製造機器の維持困難が伝えられ、ロシア軍によるウクライナ侵略後には、ロシア軍需産業における労働力不足も報じられるようになります

少ないながら漏れ聞こえてくる「匿名のロシア軍やロシア軍需産業関係者の話」によると、防空ミサイルの増産大号令をかけているロシア国防省は配備済S-400用のミサイル48N6シリーズに注力し、ウクライナ戦線で必要のないS-500開発を後回しにしているとか、2021年に首都防空専門部隊に初納入されたS-500は「極超音速兵器対処能力を備えていないミサイルを配分されている」状態で、

S-500 Prometheus4.jpg現状では好意的に見ても、S-400よりは部分的に優れているが、現在提供されているミサイルでは射程も400㎞程度とS-400レベルで、大気圏外目標対処能力(exoatmospheric)はなくTHAAD以下の能力だと見られているようです。また極超音速兵器対処能力については、テストの実施はなく、極超音速兵器を模擬する模擬目標もない状態だと伝えられているようです

またコスト面でも、1個のS-500システム(発射機8台)で、当初は1100億円程度だったものが、2023年時点では3500億円程度にまで跳ね上がっている模様で、今のロシア政府の財政状況からしても、近い将来に大きな進展がありそうな予感が無い状況だと記事は伝えています

2023年1月の記事:ロシアの新兵器?
「大改良新型TU-160M2爆撃機開発前進!?」→https://holylandtokyo.com/2023/01/20/4170/

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