衛星メーカーは1年-1.5年猶予で衛星を準備
「hot standby」指示でまず48時間待機
「alert」指示で30日間態勢維持
「notice to launch」指示で24時間以内の打上態勢へ
8月24日、米国防省の革新調達部署DIUが米宇宙軍のSpace Systems Commandと連携しつつ、関連企業に「24時間以内の緊急衛星打ち上げ態勢確立」向けた提案を9月7日までに求める要請書を発出しました。同様の初期的な情報要請は、2019年5月に当時の米空軍Roper調達担当次官らが実施していますが、今回は米議会も今後3年間で少なくとも160億円を準備し、本格検討&準備する模様です
衛星システム対する脅威への危機感は年々高まっており、ロシアが既に地上発射型で軌道上衛星を直接攻撃する兵器(direct ascent anti-satellite weapons)や衛星を無効化する物体を射出する衛星(nesting doll)を試験し、中国も直接攻撃兵器の他、宇宙空間で他の衛星をロボットアームで捕獲する能力を持つ衛星を試験した等と言われています
このような対衛星兵器の攻撃を受け被害が出た場合にも、迅速に「代替衛星」を投入することができれば、宇宙能力全体に穴をあけること無く任務が継続できることから、そのための様々な検討が米国防省内で継続的に実施されていた模様です
2019年に米空軍主導で実施した実施した企業を巻き込んだ調査検討時は、4つの企業(ULA、Space-X、Blue Origin 、Northrop Grumman)に「実現可能性に関する感触」を問いかけ、概して言えば「現状で11日から1か月半で打ち上げ可能で、要求があれば2-3日以内発射の態勢は今でも確保可能」、「空軍の要求に答える技術はある。問題はコストだ」、「前提を置いて準備サイクルを見直す必要」、「ICBM等のロケットエンジン活用で、準備時間を短縮できるのでは」等の意見が企業側からあった模様です
これら以前からの検討も踏まえ、「Victus Haze」計画と呼称された24日の提案要請は、発射関連地上施設と発射ロケットと衛星の準備を含め、以下のような「運用手順」を「前提」として関連企業に提示し、提案を求めたようです。
●衛星の準備は、要請から1年から1.5年以内で実施し、同じサイズで異なった任務に対応する装置を搭載した衛星を準備する
●宇宙軍からの「hot standby態勢」指示で、ロケット提供者と衛星製造企業と地上管制施設は、まず48時間で打ち上げ可能な待機態勢に入る
●続く「alert態勢」指示で、「hot standby態勢」を30日間維持できる態勢に入る
●その後に出される「notice to launch」指示で、24時間以内に打上げ可能な態勢を確立する
また緊急打ち上げされる衛星には、軌道上に到着後48時間以内に任務遂行可能態勢を確立し、他衛星に接近して当該衛星を査察して分析する「rendezvous and proximity operations」を遂行する能力が求められ、同任務遂行を少なくとも6か月間実施可能な状態を維持することが要求されているようです
更に、この「Victus Haze」計画は「全てを企業能力を活用して遂行」との大前提で進められ、同計画の前段階である「Victus Nox」計画の担当企業が、2022年9月に2社選定(衛星担当Millennium Space Systemsと打ち上げ担当Firefly Aerospace)が発表済で、細部は未確認ですが、協力体制を整え待機しているとのことです
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引き続き宇宙分野に関する基礎知識が不足しているため、関連企業に提示された前提となる「運用手順」などなど、元ネタとなっている8月25日付米空軍協会web記事のまんぐーすによる翻訳や解釈は、「かなり信頼性が低い」ですのでご注意ください
どんな難しさがあるのか、ボトルネックはどこなのか等、基礎知識不足は否めませんが、今後の展開に注目いたしましょう
2019年の米空軍検討&調査
「24時間以内の緊急打ち上げへ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-01
最近の宇宙軍動向と民間脅威レポート
「初のTargeting Squadron」→https://holylandtokyo.com/2023/08/23/4970/
「別の脅威レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-15
「CSIS宇宙脅威レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-14-3