敵の宇宙関連アセット無効化手法の分析専門部隊
中佐指揮官の「第75 ISR Squadron」編制
8月11日、米宇宙軍のコロラド州Peterson宇宙軍基地の「Space Delta 7」部隊内に、仮想敵の宇宙アセットの状況を常日頃から様々なソースの情報を基に分析し、米統合軍にその無効化手法オプションを提供する初めての専門部隊「75th ISRS:第75 ISR Squadron」が編制されました
2019年12月に米宇宙軍が創設された当時から同部隊編成構想が検討され、4年越しの部隊立ち上げとのことでしすが、米空軍内に宇宙部門があった当初から同様のアイディアが検討されてきており、長年の関係者の努力がやっと実ったことになります
米空軍協会ミッチェル研究所の宇宙研究員のCharles Galbreath退役大佐は、「75th ISRSは、仮想敵の宇宙アセットを構成する3要素(衛星と地上の管制装置とその2つを結ぶ信号)の視点から対象アセットを普段から分析整理し、必要時にそれら敵アセットを如何に効率的に無効化するかの最善策を統合部隊に提言する任務を担い」、
「例えば、米軍の通信妨害システムから妨害電波を出し、敵の地上管制センターと敵衛星の通信を妨害したり、時には米軍爆撃機から敵地上管制センターにJDAMを投下する等の選択肢を助言する」と同部隊の役割を説明しています
中国が相手のケースを想定すると、中国大陸内部の衛星管制施設を爆撃やミサイル攻撃で物理的破壊することが難しい場合は、サイバー攻撃もオプションになるでしょうし、それが困難であれば衛星との通信を妨害したり、衛星に直接作用する手段を最適オプションに推薦することも考えられます
同部隊編成を報じる8月17日付米空軍協会web記事によれば、米空軍時代には宇宙担当の情報幹部がそのような役割を持っていたとも言えなくはないが、仮想敵の脅威レベルの高まりや技術レベルの発達を背景に、より専門的な要員養成や組織的対処が必要となり、「75th ISRS」編制に繋がった模様です
Galbreath研究員は脅威に関し、「中国は、既に地上には物理的衛星破壊兵器やレーザー兵器、サイバー能力、電子戦兵器を配備し、今はさらに宇宙空間に電子妨害機能やレーザー兵器のほか、ロボットアームを備えた衛星を配備する準備を進めている」と危機感を強調しています
そして同研究員は、このような宇宙脅威の中で、米国はもちろん「宇宙における国際行動規範確立」、「敵の攻撃に対処可能な強靭な宇宙システムの開発」、「宇宙状況把握能力の向上」にも取り組む必要があるが、現状で限定された能力しかない米国にとって、「強力なCounterspace能力確保」も欠くことができない重要要素だと主張し、
米国が冷戦後にCounterspace能力開発を「避けてきた」現実を振り返りつつも、4月に米宇宙軍のSaltzman参謀総長(正確には作戦部長ですが・・)が細部不明ながら、「2026年までに、Substantial On-orbit Capabilityの完全運用態勢を構築する」と米議会に約束したことに期待しつつ、宇宙兵器分野で米国が多様なオプションを保持すべきと強調しています
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17日付米空軍協会web記事は、図で「Counterspace能力」を6種類紹介し、「衛星への物体衝突」「通信電波妨害」「レーザー光線」「化学物質吹き付け」「高出力マイクロ波照射」「ロボットアームでの破壊」の6つを図示しています
中佐が指揮官の「75th ISRS」は、50-100名前後の規模と推定されますが、任務の重要性や特殊性からして、様々な関係部隊との連携が重要な部隊と拝察いたします。日本も特定地域や国の分析の一端を担うことで、関連技量を高め、米軍との関係強化にもつなげたいところです
自衛隊と米宇宙軍の関係強化
「本格協議SETスタート」→https://holylandtokyo.com/2023/07/26/4884/
米宇宙軍の兵器
「米宇宙軍初の攻撃兵器CCS」→https://holylandtokyo.com/2020/04/14/725/