サリン等の化学物質は無効化完了
残るはロケット弾頭など9月末期限まで
化学兵器禁止条約未締結国3つと
締結国でも保有&使用疑念のロシアやシリア
7月7日付Defense-Newsが、1997年に発効した化学兵器禁止条約に基づき米国が取り組んできた保有化学兵器の破棄措置期限が9月末に迫る中、6月22日にロケット弾頭に充填されていたサリンなどの化学剤3万トンの無効化が完了し、残るは化学兵器運搬手段で化学剤が充填されていたM55ロケット弾等の処分のみになったと紹介しています
化学兵器は1925年(発行28年)のジュネーブ議定書で「使用禁止」とされましたが、その開発、生産および貯蔵までは禁止されておらず、1993年1月にパリで署名され1997年4月29日に発行した「化学兵器禁止条約」(現在まで193か国署名批准、エジプト、NK、南スーダンのみ未締結)で、保有まで禁止されたものです
1997年から約10年で既保有化学兵器の破棄が求められましたが10年では完了せず、2011年時点で米露リビアの3か国の破棄未完了が確認され、条約締結国から早期破棄完了が求められました。これを受けロシアが2017年9月、リビアが同年11月に破棄完了を報告しました
ピーク時には3万トンが80万発の弾頭に分かれて保管されていた米軍化学兵器は、破棄場所や手法等をめぐって主要貯蔵施設のあったケンタッキー州やコロラド州の理解がなかなか得られず、太平洋上のジョンストン環礁やユタ州の砂漠施設での化学剤破棄作業から順次開始され、2015-16年からやっとケンタッキー州やコロラド州での破棄作業も追随、2023年6月22日に化学剤破棄処理が完了したもようです
現在は、代表的な化学兵器運搬手段であったM55ロケット弾約5万発の破棄作業が9月末の期限に向けて行われており、一部の副生成物は微生物とともに処分されたり、金属部分は540度C以上の温度で無害化されたのち、スクラップ金属として再利用される計画となっているようです
第1次世界大戦で少なくとも10万人が犠牲となったといわれる化学兵器ですが、米国の破棄完了をもって地球上から化学兵器が消滅したと信じている専門家はおらず、米国防省のKingston Reif担当次官補は、未申告の化学兵器保有や使用が疑われているロシアとシリアに対して特に懸念を抱いていると語っています
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一応は、検証制度の実効性や加盟国数などから、「モデル軍縮条約」とも言われる化学兵器禁止条約ですが、未申告の化学兵器保有や使用が疑われているロシアとシリアなどなど、懸念は尽きることがありません
地下鉄サリン事件を経験した日本の教訓が示すように、カルトやテロリストが比較的容易に入手可能なこの兵器について、改めて考える機会となれば・・・と考えご紹介しました
AI技術で新たな兵器の恐れ
「AI作成の生物兵器に危機感」→https://holylandtokyo.com/2022/10/04/3671/
化学兵器禁止条約の解説(外務省)
中露も締結国ですが・・・
エジプト、NK、南スーダンが未締結、イスラエル未批准
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bwc/cwc/gaiyo.html
最近の化学兵器使用と最近の取り組み(外務省)
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol162/index.html