重量90㎏のTMOSから20㎏弱の太陽光利用装備へ
でも基本は前線の一等兵が大佐の質問に対応する世界
6月28日付米空軍協会web記事が、対中国などに備えて米空軍が取り組むACE構想(Agile Combat Employment)に対応するため、米空軍気象予報部隊が、現状の携行型気象観測装置TMOS(約90kg)を、より軽量で太陽光発電利用可能なIWOS(Integrated Weather Observation System 20㎏弱)へ換装する等に取り組むなどの様子を紹介しています
同記事は米空軍気象部隊の軍曹クラスへのインタビューを元に構成されており、気象部隊全体をカバーする大きな構想への言及はありませんが、「救難救助部隊」や「患者空輸部隊」などと並び、観測網がまばらな西太平洋でカギとなる部隊であり、米空軍だけでなく米軍全体を支えるその部隊の活動の一端を伝えている点で興味深かったのでご紹介しておきます
6月28日付米空軍協会web記事によれば
●現在の米空軍気象部隊が展開先の気象観測に用いるTMOS(Tactical Meteorological Observing System)は、気温、風速、露点等々の気象観測装置だが、関連の付属装置や接続ケーブル等を含めると90㎏以上の重量となり、航空アセットの離着陸先である様々な場所の気象観測に飛び回る気象部隊兵士にとって相当な物理的な負担となっている
●飛行部隊の要求に応じ、TMOSを様々な展開先に運搬して組み立て設置し、気象観測と予報を行う気象部隊兵士は約9割のケースで軍経験3年程度の一等兵クラスであり、彼らが展開先の飛行運用指揮官である少佐から大佐パイロットに気象情報を提供し、質問に答えることになる
●気象部隊の展開支援先は様々で、米空軍部隊の支援だけでなく米陸軍ヘリ運用支援のため、1か月間にわたる演習場生活を陸軍部隊と共にすることもあり、「ペットボトルを活用したシャワーやウェットティシューで体を拭く生活を30日過ごす貴重な経験」や、
●アラスカの氷河地域に展開し、「70年以上前に墜落した空軍輸送機の残骸と搭乗者約50名の収容ヘリ運用を支援した経験」など、特殊部隊さながらの多様な環境での任務遂行を、軍曹指揮官で担当することも珍しくない部隊である
●欧州や米本土であれば、前線展開部隊の観測装置がなくても、官民が設置している様々なセンサーや気象レーダー情報の活用が可能だが、中東やアジア太平洋地域では一般に流通している気象情報が限定的なケースが少なくなく、「Limited Data Forecasting Techniques」手法を総動員しての対処が求められる
●また本格紛争を想定した場合、活動の命脈となる「通信確保」が安定しない環境も考慮する必要がある。組織の現場レベルへの判断の権限移譲が米空軍の大きな方針であるが、必要な現地の気象情報を通報するには「情報の伝達」が不可欠で、全ての職種共通の課題として残されている
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台湾有事の際、第一列島線上の気象情報が最低限必要だと思いますし、日本にも気象情報データや観測上の努力が求められることも想定すべきでしょう。
米軍の「救難救助部隊」や「患者空輸部隊」の支援と同じように、気象情報のような作戦の基礎を支える面での活動も、日本が備えるべき分野でしょう
救難救助や患者空輸の大問題
「対中国に備える患者空輸医療チーム」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/
「救難救助検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/