単なるコンパス飛行ではなく地磁気の誤差解析で
機体装備が発する電磁気ノイズ除去にAIを導入し
6月7日付米空軍協会web記事が、米空軍がMITや民間AIソフト会社等々と協力し、GPSシステムが妨害や被害を受けた際の航空機航法の代替として、地球の各地点が発する微妙に異なる磁気を探知して自らの位置情報を導く「Magnetic Navigation (MagNav) project」の状況を紹介し、5月11-15日に西海岸で「量子磁気センサー:quantum magnetic sensor」を搭載したC-17輸送機が飛行試験を行ったと報じています
一般に現代の航空機は、外部からの信号に依存せず、機体搭載センサーで機体の進行方向や速度や加速度を感じて合算することで自分の位置を更新把握し続ける慣性航法装置(INS:inertial navigation system)を主に使用していますが、このINSは時間と共に誤差が大きくなることから、定期的にGPSでINSの誤差補正を行いながらナビゲーションを行います
ただGPSはGPS衛星の物理的破壊や妨害電波やサイバー攻撃に脆弱であり、対中国等の本格紛争に備えてGPSの代替を求め、「天体航法:celestial navigation」や「テレビ・ラジオ・WiFi等々の電波を利用する航法:signals of opportunity,」や「terrain-relative navigation」などが研究されていますが、「MagNav project」は各地点の地殻の相違が生む磁気の誤さを分析して位置を割り出す手法だということです。
この手法を航空機で利用する難しさの一つは、現代の航空機が通常搭載しているコンピュータ、通信機、照明器具等々の電気器具が発する電磁気の中で、地表が発する僅かな磁気の変化を読み取ってリアルタイムに分析し続けることにありますが、「MagNav project」では機械学習(machine learning)で能力を高めたAIに機体電磁気ノイズを除去させ、微弱な地表の磁気とその変化を正確に抽出する仕組みに挑戦したとのことです。
5月中旬の「量子磁気センサー:quantum magnetic sensor」をC-17に搭載した飛行試験は成功したようですが、軍用航空機が「MagNav systems」を搭載して任務飛行を行うには、まだまだ長い道のりが待っていると米空軍の担当少佐が語っています
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「MagNav systems」の仕組みが記事からは良く把握できませんが、機体搭載の「量子磁気センサー:quantum magnetic sensor」が探知した情報から、AIの手を借りて機体の電磁気ノイズを除去し、事前に作成しておいた飛行したい地域の「magnetic mapping」と照合するような形で自分の位置を割り出す様なイメージを持ちました
記事はまた、「天体航法:celestial navigation」等々との並行&融合使用で航法制度を高めることも今後の課題のように表現しており、まだまだ成熟が必要な技術との印象ですが、地道にいろんな研究を米国はやってるんだなぁ・・・と感心した次第です
ちなみに参画しているのは、「MIT’s Lincoln Laboratory」, 「the Air Force Research Laboratory Sensors Directorate」,「the Air Force Institute of Technology Autonomy and Navigation Center」「the Software-as-a-service company SandboxAQ」・・・だそうです
GPSなどの被害を前提に訓練せよ
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「なぜ露はウでGPS妨害しない?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「米海軍将軍:妨害対処を徹底」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23