入れ墨、肥満、マリファナ検査緩和に続く募集難対策
空きポストが10%以上ある職域へ1任期終了時
対象職域3千ポストがリークされ「なるほど」感
4月28日、米空軍のJoAnne S. Bass最先任軍曹(女性)が、米空軍新人兵士が1任期終了時(最初の4年契約又は6年契約終了時点)に、定員の10%以上空きポストがある他職種への転職であれば、今年6月1日から早いもの順で許可すると発表しました。
これまで空軍新人兵士の職種転換は極めて限定的な場合にのみ認められてきましたが、コロナ対策緩和後の米国社会全体での雇用急増で過去50年間で最低レベルの失業率と、肥満・犯罪歴・麻薬等の理由から対象年齢人口の僅か23%しか米軍採用基準を満たさない現状、更に対象年齢人口の僅か10%未満しか米軍への入隊に関心がない魅力低下から、
今年の新兵募集が目標数を10%以上も下回る可能性が高い状況から、一旦入隊した兵士の離職を抑えるための策として導入が決定されました
新兵募集目標が10%以上未達成になるということは、一般的な空軍基地1個分相当の5000名以上の兵士不足が発生することになり、対テロ紛争対処から対中国や台湾有事の本格紛争対処への転換を迫られ、戦力の分散運用ACE(Agile Combat Employment)構想実現を目指す米空軍にとって、極めて頭の痛い問題です
このため2022年に米空軍と宇宙軍は、優秀で他のチェック事項に問題の無い入隊希望者に関し、マリファナ使用歴検査THC陽性でも、期間を開けての再検査を認める制度試行を発表し、2023年3月には首や手に入れ墨のある者を認める緩和策を打ち出し、4月にも入隊者の肥満度条件を緩和(勤務継続のための肥満条件は現状維持)するなど、「なりふり構わぬ」姿勢を見せているところです
ただし、6月1日から導入される「充足率90%以下の空きポストがある他職種への転職」を認めることでの「入隊者引き止め効果」は微妙な気がします。
米空軍はこの制度検討段階で、「どの職域の充足率が90%以下で、1任期終了者の転職対象になるか」に関するメディアからの問い合わせに回答を控えてきましたが、米空軍募集機関トップのEd Thomas少将の転職可能対象職域と約3000ポストの概要が記された関連mailが4月4日にリークされ、米空軍が内容を認めざるを得ない状況となりました
そして明らかになった転職先候補は、いかにも現代の若者に人気が無さそうな厳しい現場仕事で、航空機などの整備職域1800ポスト、警備職700、弾薬担当職300、燃料担当職100ポスト等となっており、この制度の「引き止め効果」について、まんぐーす的には「?」と言わざるを得ません
新兵の募集難は米空軍に限ったことではなく、米陸海海兵隊も苦悩し、軍隊への入隊希望者減少傾向は世界的な傾向です。もちろん中国も同様であり、一人っ子政策の中で何らかの理由で中国軍に入隊した者も、有事には親がコネを使って前線派遣を妨害するのでは・・・と冗談とは思えぬ懸念がささやかれるほどです。当然、少子化先進国である日本でも「今、そこにある危機」だと申し上げておきましょう
第22代国防長官ロバート・ゲーツ語録100選より
(https://holylandtokyo.com/2022/03/26/2046/)
「米軍と社会の遊離を懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
米空軍のなりふり構わぬ募集対策
「新兵募集難に米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
女性初の米空軍下士官トップJoAnne S. Bass最先任軍曹
「米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20