1991年に配備が撤去されて以来の再配備問題
ユン大統領が自開発か米に展開要請を迫られる可能性に言及
CSIS米有識者委員会が提言まとめる
1月19日、CSISが主催した14名の有識者による「朝鮮半島における抑止力強化」に関する検討委員会が報告書を発表し、ユン韓国大統領の発言を引き金に大きなトピックになりつつある「韓国への核兵器再配備」について、現時点では必要なく再配備はむしろ逆効果になりかねないが、
事態の推移によっては考慮せざるを得なくなることから、公には細部計画や手順等について曖昧なままにしつつも、配備や使用要件の他、運搬手段や保管場所や保管場所のセキュリティーなど兵站支援事項などは事前決定し、事前決定したことだけは明確にしておくべきで、そのための机上検討演習を行うべきと提言しました。
この14名の検討委員には、Vincent K. Brooks元在韓米軍司令官、アーミテージ元国務副長官、Randall G. Schriverアジア太平洋担当国防次官補、Katrin F. Katz元NSC日韓担当補佐官などが含まれていますが、折しも1月11日に韓国大統領が「韓国はいずれ、米国に核兵器の再配備を要請するか、自国開発することを迫られるだろう」と発言し、北朝鮮の挑発行為がエスカレートする中、韓国世論が核兵器自国開発支持に大きく傾きつつある状況下でレポートが公開されました
同委員会は前提として、現時点では核兵器の再配備が必要な状況ではなく、核拡散抑止に重きを置くべきとBrooks元司令官が代表して説明しつつも、報告書では情勢に応じて必要なオプションとして再配備を残したとレポートについて語っています
そして報告書は、「米韓両国は可能性がある核兵器再配備を具体的に検討する机上検討演習実施を考慮すべきで、再配備の兵器の種類や配備時程やロジ的なことを事前決定していると公に明確にしておく一方で、細部計画については曖昧さを維持しておく手法を取るべき」と提言しているようです
また再配備検討演習では、「具体的な運用法や保管セキュリティ―を考慮した具体的な保管場所や、運搬手段をF-16やその後継の可能性があるF-35にするのか等も含めて煮詰める必要がある」とまとめているようです。
更に検討委員会のKatz元NSC担当補佐官は、「具体的な兵站支援面などを煮詰めることなく、この問題を抽象的に議論するのは無責任だ」、「これらの議論を恐れる必要はなく、今が議論に適したタイミングだ」と主張しています
具体的な運搬手段としては、「継続的に半島周辺に展開する核搭載巡航ミサイル攻撃原潜や戦略爆撃機、また韓国南部に拠点を持つ核と通常兵器の両方が使用可能な航空機の配備準備も意味ある選択肢だ」と提案しています
また同有識者委員会は、宇宙からの北朝鮮の動向把握が非常に重要なことから、最近日本と米国が宇宙分野における協力拡大に合意したように、韓国がミサイル警戒用の米国早期警戒赤外線監視衛星の情報に直接アクセスできるような体制整備のため、米韓両国も協力を強化すべきと提言しているようです
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CSISの同検討委員会関連webページ
→ https://www.csis.org/news/csis-commission-korean-peninsula-releases-landmark-report-enhancing-extended-deterrence-south
北朝鮮を対象にした「再配備」検討になっていますが、米韓両国に於かれましては、中国からの「嫌がらせ」にめげることなく、「細部手順の事前決定」に向けた諸検討と、「細部合意に関する曖昧さの維持」に協力して取り組んでいただきたいと思います
核アレルギーの強すぎる日本は、米韓の「再配備」検討の様々な紆余曲折を横目で見ながら、核へのアレルギーに邪魔されない純軍事的で、かつ視野の広い国家戦略を見据えた落ち着いた議論を踏まえつつ、政治的な決断に備える姿勢が望まれるのでしょう。
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