2013年に米豪でSST移設合意
2027年にニューメキシコ州から移設後、試験経てIOC宣言
完全な運用態勢確立は2023年に
南半球への設置で切れ目ない宇宙監視網SSN構築へ
9月末、2017年に米国ニューメキシコ州から豪州西部に移設されたDARPAとMITが共同開発した宇宙監視望遠鏡(SST:Space Surveillance Telescope)について、所要の調整や試験を経て初期運用態勢を確立したと米宇宙軍が発表しました。なお移設場所は西部豪州とのみ報道されており、細部位置は不明です
この宇宙望遠鏡SSTの移設は、2012年の米豪2+2での議論を経て2013年に両国で合意されたもので、合意には宇宙望遠鏡移設のほか、カリブ海島国アンティグア(Antigua)の米空軍施設に配備していた宇宙監視レーダー「C-Band ground-based radar system」を2014年に豪州西部に移設することも含む、宇宙監視ネットワークSSN強化全体を目指したものです
ただSSTの性能については、2012年に初めて取り上げた時点から一貫して「従来宇宙望遠鏡に比し桁違いの能力を有し、広範な視野と小さな物体を遠方でも探知追尾でき、物体の写真撮影が可能である」とのみ公表されているのみで、細部は不明です。豪州に設置することにより、静止軌道上の宇宙物体をより多く監視できるようです
北米大陸から南半球への監視センサーの移動は、地球の裏側にセンサーを移して監視網を拡大充実させようとの試みですが、既に移設されている「C-Band」宇宙監視レーダーは、アジアからのロケットやミサイル発射を追尾することが可能な点で中国や北朝鮮への監視強化効果も期待されています
これら宇宙監視ネットワーク強化による宇宙状況認識能力への取り組みへの背景には、例えば4月に発表された「懸念する科学者連合:Union of Concerned Scientists」による推計によると、宇宙軌道上に存在する衛星の数が、2015年に1400個だったものが、2022年4月時点で5500個に急増し、今後10年間で58000個まで爆発的に増えるとの見積もりがあり、
また9月29日付の米会計検査院GAOレポートが、増加する衛星が通信やネットワーク接続性向上に大きく貢献する一方で、衛星や宇宙ゴミの増加による物理的衝突リスクの増加のほか、衛星や宇宙ゴミからの電磁波放射や太陽光反射の増加による通信や天文学への悪影響を強く懸念し、その影響には予測不可能なものもある現実があります
また関連で米宇宙軍No2のDavid Thompson副作戦部長は、機能停止した衛星の破棄等に関する国際的な基準やルールの設定の重要性を訴え、GAOも同様のルールや基準設定のオプションを4例示し、国際的な議論を活性化すべきと米政府や関係機関に呼び掛けています
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「機能停止した衛星の破棄等に関する国際的な基準やルールの設定」や「国際的議論の活性化」は、現在の国際情勢を見ると絶望的な感がしますが、「宇宙兵器の制限」と合わせ、このような問題に地道に取り組む米国には頭が下がります。
引き続き「宇宙」に関しては基礎知識が絶対的に不足しているまんぐーすですが、日本のJAXAや航空自衛隊のレーダーで、宇宙監視に協力する検討があったと思うのですが、どの程度進んでいるのでしょうか・・・。最近は防衛省の概算要求資料を見るのもサボっていますので、反省しております
2012年当時の米豪協議関連記事
「米軍が豪に宇宙監視レーダー移設」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-11-15
宇宙兵器問題への取り組み
「民間衛星を守る国際規範を」→https://holylandtokyo.com/2022/09/05/3601/
「国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/
「提案:宇宙兵器の6分類」→https://holylandtokyo.com/2020/06/01/611/