同演習とは別で豪州F-35Aと連携訓練
8月中旬から同演習拠点の豪Tindal基地に約1か月間も
記者団の取材を避け「dynamic force employment」訓練
9月9日付Defense-Newsは、豪州北部で実施された大規模多国間航空演習Pitch Black期間(8/19-9/8)と重なる約1か月間、ハワイ所属の米空軍F-22戦闘機6機が、同演習とは別枠で同演習拠点基地の一つである豪軍Tindall基地に展開し、豪空軍F-35Aとの連携訓練を行うなど、2018年国家防衛戦略NDSに示されたコンセプト「dynamic force employment」訓練を行ったと紹介しています。
対中国を強く意識したコンセプト「dynamic force employment」は、同盟国や米軍兵士の負担となる米軍戦力の常駐形式ではなく、必要時に緊要なタイミングで大規模戦力を特定地域に投入する戦力運用コンセプトで、敵を抑止することを意識して「戦略的には予測可能だが、作戦運用面では予測不可能な戦力運用:strategically predictable but operationally unpredictable」との「売り文句」で米軍が取り組んでいるものです
米国の対テロから対中国本格紛争対処に向けた体制変換「戦力配置見直し:Force Posture Initiatives又はForce Posture Review」の中で、米国と豪州は「空軍戦力協力強化計画:Enhanced Air Cooperation program」に合意しており、今回のF-22の展開はその大きな協力強化プログラムの一環として、コンセプト「dynamic force employment」を訓練したものと担当の豪州空軍少将が説明しています
8月中旬から9月中旬まで6機のF-22が展開したTindall豪空軍基地は豪F-35Aの配備基地の一つで、Pitch Black演習への参加機約100機の大半が展開したDarwin豪空軍基地から200nm南に位置していますが、同演習用の豪A330空中給油機や米KC-130J給油機もTindallを拠点としたことから、同演習とは別枠で訓練するには好都合だったのかもしれません
Defense-NewsのPitch Black演習取材チームがF-22派遣部隊への取材を試みたものの実現しなかったようですが、Tindall基地にF-22と豪F-35Aが並んで駐機され、5機のF-22と数機の豪F-35数機が繰り返し離発着していたことから、2機種の相互運用性や連携要領確認を主目的にした訓練が行われたものと記事は推測しています
/////////////////////////////////////////
2018年に国家防衛戦略NDSが公開された当時は、対中国作戦のキーワードとして、「dynamic force employment」とか「strategically predictable but operationally unpredictable」とのフレーズをよく耳にしましたが、最近はこの言葉をあまり聞きませんねぇ・・・
最近では米軍OBや専門家が、米太平洋軍には対中国用の軍事費が増額投入されているが、肝心の米軍は4軍がそれぞれ「我が道」を進んで相互支援に消極的で、移動艦艇攻撃能力や弾薬備蓄の不足も20年間変化なく、統合作戦能力向上の証拠はどこにもないと酷評(https://holylandtokyo.com/2022/07/06/3396/)するなど、米国防省や米軍あるあるの「コンセプト倒れ」様相を呈している感が漂う状況です。残念ながら・・・
話は戻りますが、ネット上の情報によれば、今回のF-22展開期間に豪空軍パイロットがF-22操縦までやったようです。
豪州主催Pitch Black空軍演習の関連
「7か国空中給油機による外交が花盛り」→https://holylandtokyo.com/2022/09/14/3650/
「シンガポールはA型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09//3638/
「ドイツ戦闘機が初参加で日本にも」→https://holylandtokyo.com/2022/08/18/3566/
「豪州A330給油機と空自F-2の給油適合試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/10/3211/
対中国軍事作戦準備に大きな懸念
「酷評:対中国の統合強化はどこへ」→https://holylandtokyo.com/2022/07/06/3396/
「太平洋空軍司令官がACE構想の現状を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
2018国家防衛戦略関連
「CNASが2018NDSに対案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-14
「CSBAの海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「国家防衛戦略:対テロから中露対処へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-01-20