2020年にB型4機導入承認を米政府から得ているが
A型とB型が参加したPitch Black演習でA型も吟味
少佐を長とするチームが機種選定を担当する「若い」組織
9月6日付Defense-Newsが、2020年に米国防省からF-35B型(短距離離着陸型)の購入承認を得ているシンガポール空軍が、豪州で実施されたPitch Black演習(8/19~9/9)などの機会を利用してA型(通常離着陸型)の情報も収集中で、同国担当幹部が「B型以外を選択するオプションは残されている」と語ったと紹介しています
シンガポールは現在60機の能力向上改修を終えたF-16C/D型を保有していますが、2030年には機体寿命からF-16の退役が始まるようで、少佐(!)をリーダーとする5名のチームで次期戦闘機の選定を進めており、2020年1月に米国製兵器輸出許可の窓口である米国務省から、追加で8機導入オプションが付いた4機のF-35B型機調達許可を得ており、2026年から機体を受領することとなっています
そんな中ですが、シンガポール機種選定チームリーダーであるZhang Jian Wei少佐が、F-35A型(豪州空軍)とB型(米海兵隊:岩国基地所属)の両方が参加している豪州主催のPitch Black演習を準備段階から精力的に見て回る中で、記者団に具体的な機種選定決定時期については言及を避けつつ「更なる決断は可能になった段階で行う」と述べ、人口570万人ながら「したたかな」小国シンガポールの存在感を示したようです
同国は2020年にF-35B型導入承認を米国から得て、F-35の細部情報へのアクセスが可能になると同時に精力的にF-35細部情報収集を開始し、米軍の他、既に導入を開始している欧州やアジア各国ともコンタクトして、導入準備や「B型以外」のオプション検討を進めて来たようです
同少佐らはPitch Black演習で、F-35A型とB型がF-15、16、Su-30、Eurofighterなどと共に訓練し、F-35が参加した初の大規模航空作戦演習におけるF-35の「force multiplier」ぶりを豪州空軍や米海兵隊F-35部隊に密着して確認し、併せて維持整備部門ともコンタクトしてF-35導入(型式選定も含め)準備を進めているようです
ちなみに、国土の狭いシンガポールは、米国アリゾナ州Luke空軍基地にシンガポール空軍F-16訓練飛行隊を置いて操縦者等養成していますが、F-35への機種変更に伴い、F-16訓練部隊は2023年にアーカンサス州に移り、Lule基地には機体受領に併せてF-35訓練飛行隊が配置されるとのことです
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シンガポールは東京23区と同程度の面積に約570万人の人口ですが、その国がF-16を60機と最新のF-15を40機、ヘリ70機や輸送機15機、E-2C4機など多様な装備を保有し、空軍13000名程度で運用していることに驚かされます
シンガポール空軍はトップが40代後半で、次期戦闘機選定の実務を少佐がリーダーで行っている「若さ」あふれる国です。
小規模な国で世界最先端を目指すため、社会統制や規律が厳しく、「豊かで明るい北朝鮮」とも表現される国ですが、F-35導入を巡る「身のこなし」からもその「しっかり者感」が伝わってきます
シンガポール関連の記事
「F-35B売却許可」→https://holylandtokyo.com/2020/01/15/866/
「2021年シャングリラ会合中止&過去の同会合」→https://holylandtokyo.com/2021/06/04/1783/