米国がトルコにF-35の代わりに最新F-16提案か!?

トルコ大統領の発言:細部不明
共同開発国支出金1500億円の代わりに

Erdogan6.jpg17日付Defense-Newsは細部状況不明ながら、トルコのエルドワン大統領が10月17日、トルコがF-35共同開発国として支払い済みの約1500億円の代わりに、米国が何機かの最新型F-16を提供したいと提案してきたと明らかにしました

トルコ大統領が、どのような場で、誰に対してその発言をしたのか記事は伝えていませんが、バイデン政権誕生後、トルコはトルコ用に製造済のF-35をトルコ側に引き渡すか、共同開発国として支払い済の約1500億円を返金するかの選択肢を迫っていましたが、これに対する米国の回答が何機かのF-16であった模様です

F-16V3.jpgトルコは約200機のF-16戦闘機を保有運用しており、その中の旧式F-16約100機をF-35に更新し、残り100機を能力向上しようとしていましたが、以下に経緯概要を示すトルコ防空システム選定でロシア製S-400を選定輸入したことでトルコ防空システムを支えてきた西側諸国が反発し、トルコをF-35計画から排除することを米国トランプ政権下が2019年9月に決定し、製造済みトルコ用F-35は米空軍が購入することになっていました

F-35導入の道を断たれたトルコには、ロシアがSU-35やステルス機SU-57E売り込んだり、トルコ自身が国産ステルス戦闘機TF-X開発に本腰を入れたりとの動きがありましたが、ロシアからの輸入も、自国開発も進んでいるとの話は聞いたことがありません。また残り100機のF-16能力向上についても、計画が煮詰まっている状況にはないようです

S-400 4.jpgもう一つの視点として、欧州NATO諸国(ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア、トルコ)による「米国戦術核兵器シェアリング」任務で、有事必要時には、各国の戦闘爆撃機によりB61戦術核爆弾が運搬&投下する約束がなされていますが、この役割をトルコに継続させるため、長く使用可能な最新F-16をトルコに提供する意味も多少はあると考えられます

いずれにしても、エルドワン大統領の発言の細部の情報が待たれるところ、その予習として、米国とトルコとF-35を巡る経緯概要を復習しておきましょう

●2013年9月
トルコ政府は中国CPMIEC製のシステムを約3600億円で調達すると決定
(この選定においてロシア製は「価格が倍以上」として不採用。他には米国製Patriotと、仏伊企業「European Eurosam」提案のSAMP-1が参戦していた)
—以後、米国やNATOが、中国製システムと既存の西側防空システムは情報保護の観点から連接不可能で、作戦運用上で極めて非効率で問題ありと強く抗議

●2015年11月
トルコ政府が中国製を選択した決定破棄を発表し、国産開発の方向を示唆し具体的関係企業2社に言及
—一方で発表後も、米企業チームと欧州チームとも並行して売込み交渉を継続

●2016年10月
—イスタンブールで開催された国際会議に出席したプーチン大統領とエルドワン大統領が会談し、トルコがロシアにミサイル機種選定に参加するよう招待
(仮にトルコがロシア製を選択した場合、中国製と同様に、西側防空システムの情報漏洩への懸念から西側防空システムとの連接は不可能となるため、またF-35のステルス情報がロシア製SAMレーダーで暴露する懸念から、西側はトルコに翻意を促す)

●2017年2月
—2月12日、エルドワン大統領が、2013年から紆余曲折を経てきたトルコ防空システムの機種選定に関し、ロシア製「S-400」購入契約を結んだと明らかに
(以後も西側は継続して、トルコに対しロシア製SAM導入を断念するよう説得)

●2019年7月
—西側の説得にもかかわらず、トルコはS-400受け入れを断行し、装備がトルコに到着
同年7月16日、トランプ大統領が「トルコ側に、F-35を売却できないと伝えた」と発表し、Lord調達担当次官は、共同開発国としてトルコが担っていた約900ものF-35部品製造については、2020年初めまでに米国を中心とした他国調達に切り替えると発言

●2020年10月
F-16 turkey.jpg—地中海諸国と共同演習を行っていた米空軍F-16を、トルコ軍のロシア製S-400レーダーがロックオンした事実が明らかになり、またトルコがS-400をNATOとロシアが対峙して緊張感が高いウクライナ近傍の黒海沿岸に配備する動きを見せ、米議会がトルコへの経済制裁をトランプ政権に要望
—トルコが担っていたF-35部品供給の代替先を見つけることが、コロナの影響もあり困難で、トルコからの部品供給を2023年まで継続せざるを得ない状況が明らかになる
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USA Turkey.jpgバイデン政権が誕生後も、両国間の探り合いが続いているのが米トルコ関係と認識しています

アフガンからの撤退の件もあり、米国内での求心力が急速に低下しているバイデン大統領ですが、トルコ関係はどうなるのでしょうか? 米国からのF-16提供案に対するトルコ側の反応と共に、気になるところです

米トルコ関係
「トルコへのF-35部品依存は2023年まで」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-10
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21
「ロシア製S-400購入の経緯」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23
「露がトルコにSU-35売込み大詰め!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-29
「プーチンがトルコにSu-57Eを売り込み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28-1
戦術核兵器とF-35等
「F-35への戦術核搭載へ:投下試験終了」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-06
「米空軍に追加の戦術核は不要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-04
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

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