2020年8月に開設したVTTCの現状と方向性
改めてバーチャル訓練の必要性や重要性を確認
8月23日付米空軍協会web記事が、2020年8月に開所して2027年の運用態勢確立に向けた設備や各種連接機能の充実過程にあるた米空軍VTTC(バーチャル試験&訓練センター:Virtual Test and Training Center)の現状を紹介しています
ネバダ州ネリス空軍基地内に建設されたVTTCは、米空軍戦闘コマンドACCの配下にある「Air Force Warfare Center」(指揮官少将)の一部をなす施設で、フロリダ州エグリン基地に司令部を置く第53航空団(同Warfare Centerの配下部隊:各種兵器&戦法開発や電子戦やISR等の技術戦術開発を担い提案する専門部隊)が管理する施設です
縦横80m四方の規模イメージのVTTCは、2020年8月開所時に「世界中で発生しうる如何なる紛争もこのセンターで再現や提示ができる体制を目指す」、「最終的に、米空軍のみならず、米軍他軍種や同盟国が世界中からバーチャル演習に参加可能な態勢に」、「今後F-15Eシム装置を建設するほか、既にネリス基地内所在のF-35、F-22、F-16戦闘機のシミュレーターを、同センターと連接してバーチャル環境に組み込む予定」等々と構想が紹介されていたところです
23日付の記事はVTTCの現状について、「2028年まで毎年25億円規模の予算を付け、ソフトやシム装置の充実に取り組んでいく」、「(米空軍の研究開発を担う)マテリアルコマンドや米海軍システムコマンドの協力も得て先行的にVTTC充実を図る」とのVTTC担当幹部のコメントを紹介しています
また2023年度予算で、米国政府保有のモデル検証やシミュレーション実験環境であるJSE(Joint Simulation Environment)への連接も計画されており、VTTC指揮官の中佐は「JSEとの連接機材搬入のため、古い機材を運び出す等の準備作業を行っている」と説明しているほか、
米空軍の主要な作戦用航空機全てをVTCCと連接できるよう、機種毎にバラバラなシム装置を連接できるような検討や、ネリス空軍基地近傍の演習場で実施される実機飛行をVTTCと合成できるような技術開発にも取り組んでいると語っています。
VTTCが重要性を増す3つの理由
(VTCC運用管理部隊指揮官の説明より)
●敵及び味方の進歩が早く実環境で十分な訓練が困難
・中国やロシアは急速に新兵器の導入や陸海空宇宙ドメインを融合した運用法導入を進めており、実環境で米軍の仮設敵部隊が敵を模擬することが困難。例えば中国のJ-20ステルス戦闘爆撃機の模擬は、米軍の仮設敵機部隊では困難
・また、米軍の装備も格段に進歩しており、例えばF-35のような優れたセンサーとAI分析能力を装備する機体は、敵のSAMを模擬した地上装備を見破ることが可能で、そのような能力を含めた最大発揮を訓練させる環境の作為が実環境では不可能に
●演習場の広さや電磁環境の制限下では訓練が困難
・保有兵器の射程が延伸される方向にあり、演習場内では戦闘環境が設定できない
・また、宇宙も含めた複雑な電磁スペクトラムへの妨害が想定される中、実環境でそのような妨害を模擬することは困難
●機種毎に各企業が作成したシム装置を連接するのは大仕事
・5年ほど前からバーチャル環境訓練の重要性が認識され始めたが、バーチャル訓練や他機種シム装置との連接を念頭に開発された各機種シム装置は少なく、本格紛争を模擬するレベルの連接には高度なシム連接合成環境(synthetic environment)の創設が必要
・更に、同盟国やパートナ国等にも参加しやすい環境を提供するにも、米国製アセットだけではなく、広く対応可能なシム環境を準備する必要がある
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VTTCが2020年8月に開設された際にもコメントいたしましたが、日本は広大な国土を持つ米国よりも遥かに実機による実動訓練や演習が難しい環境にありますから、最新装備を導入すればするほど、このようなバーチャル訓練環境が必要になると思います
例えば航空自衛隊であれば、F-35機体購入費だけで財布が空になり、訓練費も維持整備費も、バーチャル訓練環境も置き去りにされ、・・・ついでにネットワーク環境整備も不十分なので、ネリス基地との連接も困難・・・との状態でないことを祈ります
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