米議会や他軍種や他国からの追い風がなさそうな状態なのに
2024年度予算案に組み込む必要性を訴え
最後は国防省調達担当次官の判断だと
7月26日、kendall空軍長官が講演で、耐久性に問題がありF-35稼働率低迷の一つの要因となっているF135エンジン問題に関し、2024年度予算空軍案を決める夏に、新型AETP(Advanced Engine Transition Program)エンジン導入の方向を決定したいと訴えつつ、米海軍やや海兵隊にも関係する問題であるので、LaPlante調達担当国防次官に最終判断が委ねられていると述べました
新型AETPエンジンは、もともと次世代制空機NGAD用に開発されてきたエンジンで、これを今頃F-35に搭載しようとすると7000億円以上の追加経費が必要な上、垂直着陸型F-35Bには搭載不可能な構造になっていることから、先日退官したFick国防省F-35計画室長(空軍中将)は、「異なる道に進むなら、他者へのコスト増が無いように、米空軍独自の経費でやるべきだ」と突き放した発言をしていた所です
また、これまでのところ、米空軍以外で新型AETPエンジンを導入したいと表明している軍種やF-35導入国はありませんし、現在のF135エンジン改修搭載案にも前向きな発言を聞いたことがありません。(F-35維持費が高止まりしている中、他軍種も他国もそれどころではない状態です)
そんな中でもKendall空軍長官は講演で、「だらだらとF-35への搭載検討研究開発費を投入したくない」と述べつつ、「私は強くATEPエンジンを希望している。F-35の更なる能力向上につながるからだ」、「最終的な決断は、他軍種やF-35他形態との国防省としての立場の一体性から、調達担当国防次官に委ねられるだろう」と語っています
米議会の中は様々なようで、2022年度国防授権法では、AETPエンジンであるGE社 XA-100 とPratt & Whitney社XA-101エンジンを2027年までに「Block 4」形態以降のF-35に搭載可能かについて、よく吟味するよう国防省に検討を求めている一方で、
35名の超党派議員団は LaPlante調達担当次官にレターを送り、F-35が本格大量生産に入る中で極めて改修リスクが高く、追加費用も膨大なF-35へのAETP搭載案を断念するよう要求し、F-35計画の屋台骨である「兵站分野の共有化」をAETPエンジン導入でぶち壊すことがあってはならないと警鐘を鳴らしています
ちなみに、AETPエンジン導入のメリットについて空軍長官は講演で触れなかったようですが、26日付米空軍協会web記事によれば企業関係者は、推力の増加やステルス性の向上、更に電子戦能力向上やエネルギー兵器搭載を容易にする発電量増加を挙げているようです
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今年5月17日の上院証言でKendall長官は、「空軍単独で進むことは考えない」との方向性を示唆していたようですが、このような他軍種や議会やF-35導入国との関係にあまり配慮しているようには見えない発言の真意はどこにあるのでしょうか?
F135エンジンの改修型導入か、AETPエンジン導入か、はたまた現在のF135の修理体制を増強して、予想より頻発する故障に対応しながら付き合っていくのか・・・極めて大きな「亡国のF-35」を巡る動きですので注視してまいりましょう
F-35のエンジン問題
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院でエンジンとODIN議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「民間監視団体が酷評」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/