昨年3月の事案をなぜか今公表
イラン製ステルス形状無人機がパレスチナ自治区に兵器輸送中か
F-35は低速度低高度目標にも有効だとアピール
イラン核合意再構築協議が終盤で混乱する中
3月7日イスラエル軍は、昨年2021年3月に、イラン製のステルス形状無人機がガザ地区のハマスに武器輸送を企て飛行していると推定されるところを、イスラエル空軍F-35I戦闘機で撃墜したと発表しました。
イスラエル軍は撃墜場所や無人機の飛行諸元について会見で触れず、なぜ1年後の今になって公表したのかについても説明しませんでしたが、撃墜状況等について以下のように説明しています。
●隣国との情報交換もあり、地上レーダー情報で当該無人機の飛行状況は良く捕捉&把握されおり、イスラエ領空に侵入以前の他国上空の最適な作戦遂行地点で撃墜した。
●撃墜した無人機は、残骸からイラン製の「Shahad 197」無人機と推定される。
●当該無人機は飛行ルートと残骸の分析から、イスラエル国内のパレスチナ自治区である西岸地区かガザ地区の過激派武装組織ハマスへの兵器輸送(munition transfer)に従事していたと推定される
●ちなみに、2018年2月にはイランがシリア領内からイスラエルに向けて武装無人機「Shahad 141」を飛行させ兵器密輸を試み、2021年5月には同じくイランがイラクから無人機をイスラエル領内に向け飛行させた事案が発生している
●撃墜した無人機は低空を低速で飛行しており、また小型であることから一般には探知が困難であるが、F-35のレーダーが巡航ミサイルのような低高度目標探知追尾にも適していることを証明して見せた
●また、F-35操縦者用の最新型ヘルメットは、その赤外線追尾装置と光学ターゲティングシステムを融合して操縦者に目標情報を提供し、当該無人機の迎撃に貢献した
●イスラエル空軍は既に発注した50機のF-35を順次受領しており、更に25機を追加でオーダーする方向で検討を進めていると報じられている
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第一印象として、安価な無人機や巡航ミサイル迎撃にF-35を持ち出すコスパの悪さは、相手にコスト負担を押し付けたい敵からすれば、「飛んで火にいる夏の虫」状態だと思うのですが・・・
イスラエルが、なぜ今昨年3月の事象を記者ブリーフィングまで開いて公表したかと言えば、恐らく「イランとの核合意再構築」に向けた米英仏独ロとイランとの協議が大詰めを迎え、複数の外交筋が「大筋合意し最終段階に入った」と述べている中、イランは危険な国だとアピールしたかったからでしょう
ただ、この「イラン核合意の再構築協議」ですが、8日になってロシアが「ウクライナ侵攻を巡る西側の制裁が、露とイランとの貿易に影響を与えないことを書面で保証せよ」、「イランの核プロジェクトの実施や、貿易・経済関係に打撃を与えないと明確にする必要がある」と強く米国に求めたことで、土壇場になって混迷が深まっているということです
この核合意再構築に反対するイスラエルが、露とウクライナとの仲介に乗り出し、イスラエル首相がプーチンとの3時間会談で「イラン核合意」の話題を持ち出したことも容易に想像できますし、平和ボケ日本人の思考の枠組みを超えた、複雑怪奇な裏の裏を想像させるイスラエル軍の発表だったということです
イスラエルとロシア
「なぜイスラエルが露とウクライナ仲介?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
アブラハム合意関連
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26