どうやら艦載機部隊が間に合わない模様
地域コマンド指揮下でなく、海軍指揮下でお披露目航海に
2月3日付Defense-Newsは米海軍幹部の発言から、6年遅れで各種不具合修復が完了した新型空母フォードの2022年後半の初任務航海について、地域コマンド司令官の指揮下に投入する通常の作戦任務航海でなく、米海軍(第2艦隊)管理下の能力お披露目航海になるだろうと報じ、艦載機数も完全な数量を確保できないだろうと厳しい米海軍の台所を紹介しています
新型フォード級空母の一番艦空母フォードは、昨年末に最後まで残っていた兵器運搬エレベータの不具合改修を終了し、現在は残った装備品の搭載作業と各種試験後の艦艇修理に入っています。
今後について同記事は関係幹部の話を総合し、2022年後半に本格任務投入ではなく、約3か月ほどのお披露目初任務航海を大西洋からカリブ海エリアで行って沿岸各国軍との連携確認を行い、その後再び修理&訓練期間を経て、2023年末または2024年上旬から、地域コマンド指揮下の本格任務行動に投入されることになりそうだと分析しています。
6年も遅れてまだ「よちよち歩き」かよ・・・と突っ込みたくなりますが、どうやら背景には、米海軍全体で空母戦闘群を支える艦載機部隊を十分用意できないほどの予算や維持整備上の問題があるようです
例えば、大西洋海軍航空部隊司令官John Meier少将は、「空母フォードでは2020年から21年にかけ8200回の離発着訓練を行い、艦載機部隊の態勢は出来つつあるが、弾薬搭載を含む最終段階訓練を含めると、必要な艦載航空団を完全に準備できていない」と現状を語り、
「2022年秋ごろからの初任務航海は、短期間に濃縮した要員要請も兼ねた任務展開となる」、「完全な空母艦載航空団より小ぶりな態勢とならざるを得ない。コストと配分可能な資源のバランスを考慮した上での現状である」と説明しています
そして同少将は、空母フォードにどれだけ資源配分するかについて、米海軍全体で統合部隊からのニーズを踏まえて議論が行われているとも説明しています
また1月に米海軍水上艦艇司令官のRoy Kitchener中将は、地域統合コマンドのニーズや保有資源や予算を総合的に勘案し、米海軍として艦艇を何隻運用可能な態勢で提供するかを「賢明に」判断していく必要がある。その際準備する艦艇には、完全な態勢の艦艇と低レベルの態勢の艦艇が混在することも前提として考えねばならない、と台所の厳しさを示唆していたところです
それでも2022年秋の3か月間程度の仮運用初任務展開(@大西洋)に向け、担当する第2艦隊は準備を進めており、同盟国との共同訓練招待状を出したり、同空母の能力を示す機会を作為する準備に忙しいようです。
本当に米海軍の今後は多難です。
フォード級空母関連の記事
「6年遅れ空母フォード不具合修復完了」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-26
「新型空母フォードの計画責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「お披露目演習でEMALS故障」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-12
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「米海軍真っ青?トランプ「EMALSはだめ」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「空母を値切って砕氷艦を!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10
空母の存在意義を巡る議論
「対中国専従空母の厳しさ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「半年かけて空母の将来像を至急検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「レーザー兵器搭載に自信」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-05
「国防次官が空母1隻とミサイル2000発の効果比較」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20
艦艇建造&修理の大問題
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09