外交的な交渉戦術だとの見方もあるが
米国がF-35の使用制限を求めているらしく・・・
中国軍事施設のアブダビ建設の懸念も
12月14日、UAEがトランプ政権下で合意した50機のF-35など約2兆6千億円の兵器購入交渉を「停止:suspend discussions」したと発表し、各方面に波紋が広がっています・
この武器売却交渉は、トランプ前政権時に米UAE間で、UAEに50機のF-35と18機のMQ-9無人攻撃機や最新の空対空&空対地ミサイル等を売却合意した件に関するもので、バイデン政権になってから、UAEやサウジのイエメンへの武器使用批判などから手続きが遅れているものです
UAE側の「停止」発表や関連発言はそれほど厳しい内容には見えませんが、UAE政府関係者は「米国がF-35をhow and whereで使用するかにまで制限を加えようとしている」「主権の侵害だ」とまで不満を述べており、気になる雰囲気です
また米軍事メディアは、UAEがアブダビに中国の軍事施設の建設を受け入れようとしているとの米側懸念も紹介しており、中東最前線でのつばぜり合いも感じられますので、報道記事を紹介しておきます
14日付Defense-News記事によれば
●14日、UAEはF-35購入交渉等を停止すると発表し、在米大使館が「米国はUAEにとって引き続き好まし最新兵器提供国であり、F-35購入交渉は将来再開されるだろう」との声明を出した
●ただしUAE交渉関係者は、米国側はどこでどのようにF-35を使用するか等について執拗に制限を課すよう求めてきており、UAEの主権を侵害するものだとメディアに不満を表明している
●ブリンケン米国務長官は15日、UAEが(制限を)受け入れるならば(if the Emiratis decide to do so)売却を進めることを示唆し、「我々はイスラエルの質的優位を確保するため、地域の国々への技術提供を見極めており、UAEも含まれている」と訪問先のマレーシアで語っている
●米国防省のKirby報道官も記者団に「米国製兵器に関する米国側の他国への要求は世界共通であり、議論の対象ではなく、UAEも例外ではない」、「米UAE関係は、単なる武器売却より、更に戦略的で複雑だ」ときっぱりと語った
●WSJ紙が最初に報じたUAEの「交渉停止」について情報筋は、UAEの「停止」発表文書が比較的低いレベルの官僚から出されたものである等から、UAEの戦術的動きだと推測し、アフガンからの大混乱の撤退の中でもUAEと米国は協力して行動していたと指摘しているが、最近の中国とUAEの関係に米側は懸念していると述べている
●12月6日の週、UAE外交担当高官はDCで、米側が軍事施設ではないかと懸念するアブダビ構内の中国施設工事を、「米側の懸念を受け、UAEが工事を停止させた」と述べる一方で、「それら建物は軍事施設ではない」、「米UAE間の議論は率直なものだ」とも主張している
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米国と湾岸諸国間の複雑な政治力学について語る知識はありませんが、中国が米UAE間にくさびを打ち込もうとしていることは間違いなく、まだまだ色々ありそうです
全く別の視点ですが、イスラエルとの関連や情報流出防止の観点から「米国がF-35をhow and whereで使用するかにまで制限を加えようとしている」とUAE側は不満なようですが、日本と米国間ではどうなんでしょうか?
ロシアや中国正面で最新兵器を運用する日本に、米側から何か「制限」要求があるのでしょうか? 気になることろです
中東と米国の関係
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