「米陸軍の知的頭脳センター」トップの中将が語る
戦闘職種の基礎課程期間の延長や体力テスト厳格化も
10月28日付Military.comが、「米陸軍の頭脳」「米陸軍幹部の教育拠点」とも呼ばれるArmy Combined Arms Centerの司令官にインタビューし、米陸軍の極超音速兵器やPrSMなど長射程遠方攻撃ミサイル開発が話題になり、サイバー戦やAI技術に焦点が当たる中でも、敵が精密誘導兵器の使用をためらうような手りゅう弾が飛び交う近接戦が将来戦でも重要な柱だと強く主張する様子を紹介しています
またそのような原点回帰の中で、米陸軍が基本戦闘職種の基礎課程教育期間を延ばして新人兵士の個人戦闘能力を重視し、体力テストの内容や基準を見直して基礎体力を重視する改革の様子を紹介しています
過去20年以上のイラクやアフガニスタン等での対テロ作戦から、軍備の近代化を急速に進める中国やロシアとの本格紛争に向けた備えに米軍が切り替えを急ぐ中、米陸軍は上記の長射程兵器開発を重視する姿勢を鮮明にし、「(上記兵器が出そろう予定の)2023年に米陸軍は変わる」と担当将軍や陸軍長官が豪語していたところです
そんな中での「接近戦への回帰」発言でまんぐーすも驚きましたが、真に作戦環境分析から生まれたニーズなのか、巨大組織維持のための「方便」なのか今後見極める必要がありそうなので、「米陸軍の部脳・知性」を司る司令官等の発言をご紹介しておきます
10月28日付Military.com記事によれば
●28日のMilitary.comによるインタビューで、Army Combined Arms Center司令官のTed Martin中将は、将来の本格紛争は遠方からボタンを押して戦うような戦いにはならず、迅速に敵に近接する位置まで地上部隊が移動し、敵兵器を直接破砕するような血なまぐさい戦いになるだろうと語った
●同司令官は、スピードと機動力が敵の攻撃を回避するため死活的に重要であり、敵に迅速に接近することで、敵が友軍誤爆を恐れて攻撃を躊躇するような位置まで敵に接近することが緊要だと語った
●また同司令官は、アフガンでの戦いの様に、粗末な前線基地から、無線とライフル程度の武装のタリバンと戦う時代は過ぎ去ったと述べ、
●「我々は、敵対者がどのような兵器に投資し、どのようなドクトリンを持ち、どのように衛星を使用し、ISRを行い、遠方から精密誘導攻撃を行うかを注視しているが、その結果として、我々は迅速に移動して敵に近接する必要があるのだ」と主張した
●また同センターの基礎訓練課程責任者のJohn Kline准将は、「将来の戦いについて、戦線から遠く離れた民家の地下室で、飲み物を片手にサイバー攻撃を操るイメージで語る者がいるが、その認識を変えるべきだと強く主張したい」と27日のwebセミナーで訴えている
●米陸軍は将来のより混乱したカオスな地上戦闘に備えるため、幾つかの主要な地上戦闘職種の新兵基礎教育課程の期間を延長し、昨年は戦車や機甲職種の基礎課程を5-7週間延長して計22週間にしている
●また米陸軍は、長年そのままだった体力測定テストの内容や基準を見直し、より包括的なスピード力を重視する「Army Combat Fitness Test」として来年から正式に採用することになっているが、試行段階の現時点で、女性兵士や一部の兵士が対応に苦慮していると伝えられている
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Martin中将の説明は具体的な内容や結論に至った背景を詳しく述べていませんが、(サイバーやAIやミサイル関連などの最新技術が要注意なのはもちろんであるが、)「手りゅう弾を投げ合うような市街戦に行き着くこととなり、それを繰り返すことが求められるようになる。but it’s going to come down to city fighting chucking grenades, and being able to do that over and over」と表現し、
「素早く敵に接近し、撃破する必要がある:We need to rapidly close in and destroy」と、極超音速兵器やPrSMなどの長射程兵器重視の流れとは別の、もう一つの流れも重視する姿勢を明確に示しています
奥深いというか、米陸軍全体の構想から聞いてみたいというか・・・・そんなところです。今後の展開を注視いたしましょう
最近の米陸軍関連の話題
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