タリバンが確保した兵器との写真をSNSに拡散中
現地の状況は不明ながら、米国関係者の推測は
8月17日付Defense-Newsが、米国が育てて武器を与えたアフガン空軍の兵器がタリバンの手に渡ったことに関し、その影響や脅威について米空軍や米国専門家の意見を紹介しています。また不確定ながら、アフガン政府が崩壊する前後に、隣国に空軍アセットが避難した可能性についても触れています
全般には、タリバンがたとえ飛行させることができても、維持整備をすることは難しく、また対テロ地上作戦用の初歩的な兵器で米国の脅威となることは無いとの見方ですが、固定翼と回転翼を合わせて約210機の戦力で、戦闘車両や輸送トラックや火器を合わせると、9兆円(原文ママ:$86Bn)とも報じられる兵器群ですのでご紹介しておきます
下記のアフガン軍の装備は、7月末に米会計検査院がまとめた数量ですが、弾薬や爆発物の数量については資料が見つかりませんでした。航空機についてはタリバンによる戦力化は難しいにしても、地上兵器については厄介な気がします
まず7月末現在のアフガン軍の装備
空軍関連
●固定翼 C-130を4機、A-29軽攻撃機を23機、セスナ機38機
●回転翼 旧式Mi-17を33機、UH-60を33機、MD530を43機
地上輸送装備
●装甲車両 Hunveeを2.2万両、装甲兵員輸送車を約950両
●輸送車両 SUVを4.2万両、トラックを8000両、
兵器&装備
●小火器 ピストルを12.6万丁、小銃M16を36万丁、機関銃を6.4万丁
●装備品 夜間暗視ゴーグルを1.6万個、無線を16万個
8月17日付Defense-Newsによれば米側関係者は
●8月16日の会見で米統合参謀本部の担当少将は、米国防省として米国がアフガン軍に供与した装備品がどうなっているかのついて確たる情報はないと述べ、アフガン軍装備がタリバンによって使用されないような手立てについても、何も決まっていないと述べた
●航空アセットの提供やアフガン軍への訓練を担当した関係者は、当面は避難民の国外退避を最優先すべきだが、その後は残置装備がタリバンに使用されないよう破壊作戦をすべきだと主張している。いま装備品破壊作戦を実施すると、タリバンが避難作戦妨害に出る可能性があるからだ
●空軍アセットで最新の攻撃力を備えるのがA-29軽攻撃機だが、米空軍戦闘コマンドのMark Kelly司令官は、ブラジル製の単発プロペラ推進機に、米国製のセンサーや兵器を搭載したもので、タリバンがどうするか不明ながら、
●A-29が米軍を脅かすような最新技術を搭載しているわけではなく、速度や航続距離、コンピュータ能力や兵器搭載能力も限定的だと16日に述べている。初期型のUH-60 Black Hawkを含めても、仮に中国やロシアの手に渡ったとしても、流出を懸念する目新しい技術はないとも同司令官は語っている
●また同司令官は、タリバンが仮に航空機を運用しようとした場合に直面する、厄介な課題を上げ、
・ タリバンは安全に飛行可能な操縦者や必要な整備員など運用支援要員を確保できない
・ 仮に操縦者や整備員を見つけてきたとしても、機体維持上のコストや部品確保はより高いハードルだ
●タリバンが外国勢力の力を借り、航空アセットを使用可能になる可能性は否定できないとの意見もあるが、そもそもアフガン国内でタリバンに対する組織的な抵抗活動がない中、航空アセットの使用必要性は限定的だとの見方もある
アフガンから退避した航空アセット情報
●8月15日夜、タジキスタンの許可を得て、3機の航空機と2機のヘリが、計143名のアフガン軍兵士を乗せてタジキスタンに到着、とNYT紙が報じている
●ウズベキスタンにも退避したとのウズベキスタン検察情報が16日にあり、8月14日と15日に、22機の固定翼機と24機のヘリが、585名のアフガン軍兵士を乗せて移動したと現地通信社が報じている
●またウズベキスタン検察は、別に3機のA-29軽攻撃機が同国に飛来し、エスコートに飛び立ったMig-29戦闘機と1機のA-29が空中衝突したと一時発表したが、16日になって全ての情報を取り消し、その後は沈黙している
////////////////////////////////////////////
アフガン軍用に米国が提供した兵器や装備の動向については、今後様々にメディアが報じるでしょうから、その背景&基礎情報として記事をご紹介しました
このような状況になることを、現地の米国関係者は感じていたのでしょうが・・・・。難しい話です
アフガン関連の記事
「アフガン避難者輸送作戦最初の10日」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-24
「C-17輸送機1機に823名も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-22
「アフガン語通訳1.8万人を特別移民認定へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-26