昨年秋の対中国War-gameで大敗北を教訓に
7月完成の非公開統合戦闘コンセプト
コンセプト実現に産業界も巻き込んで
26日、Hyten統合参謀副議長が国防産業協会のイベントでスピーチし、自らが7月に取りまとめたばかりの「統合戦闘コンセプト:Joint Warfighting Concept」の考え方を軍需産業関係者にも説明し、同コンセプト実現に向け、米軍部隊だけでなく産業界とも緊密に連携を図っていきたいと協力を依頼し、秘密保持についても要請しました
同コンセプトは4軍作戦を包括した初めてのコンセプトとの触れ込みのもので、それ以前の過去20年間の戦い方で臨んだ昨年10月の対中国想定のWar-gameで大敗北を被った教訓も踏まえて作成したと説明されています。過去20年間の米軍の戦い方は既に敵対国に読まれており、敵が米軍に先んじて行動可能なことから大敗北を招いたと同副議長は危機感を訴えています
新しい「統合戦闘コンセプト」は非公開で、同副議長も細部には言及していませんが、「迅速なデータ共有を活用した指揮統制:JADC2」、「戦力を分散しつつも、攻撃時に打撃力を集中」、「敵の機動に先んじて、我が移動」、「指揮統制が被害を受けても各部隊が自律的に行動しつつ、代替手段で迅速に通信復活」、「all domains & all servicesからの攻撃」などの方向性を講演で披露しています
この新コンセプト実現には迅速な最新技術導入が不可欠であり、重視分野に「information advantage」「joint command and control」「joint fires」「contested logistics」を指定し、Hyten副議長や各軍種の副参謀総長で構成される「Joint Requirements Oversight Council」が、関連技術動向や実現具合や問題点を広く情報収集し、課題対応を導く役割を担うようです。
そしてJROCは、従来であれば広く各地域コマンドを訪問して現状や課題把握を主に行ってきましたが、今後は重点事項に関連する各軍種の開発拠点や関連軍需産業を訪問して、新コンセプト実現に向けた動きを促進するとのことです。
ただし、厳しい予算枠の中、各軍種間の縄張り争いが激化し、例えば「遠方攻撃」に陸軍が乗り出したことに対して、空軍大将が「ばかげている」と公然と非難するなど、米軍内の統制が困難になりつつある現状もあり、11月に退役が決まっているHyten空軍大将に残された時間はわずかです
講演での言葉、「企業では最新ソフトが毎日生み出されているのに、米軍では4年に一度更新するのに必死だ」、「我々は迅速に進もうとしており、それにより国防省全体が迅速に前進できるようにしたいと考えている。ただ、私には時間がない・・・」と軍需産業界に協力を求める様子に、危機感がにじんでいます
/////////////////////////////////////////////
この新コンセプトは、エスパー前国防長官が2020年に策定を指示したもので、エスパー長官が退任する2020年末までの完成を目指していたものですが、色々あったのでしょう・・・2021年7月の完成になっています
昨年8月時点でHyten副議長は新コンセプトについて、「私が軍人キャリアで行ってきた全てと全く異なる方向性のコンセプトで、一番大きな違いは、従来存在した前線と後方を区別するような境界線がなくなることだ」、「全ての米軍部隊は、統一された指揮統制を受けつつ、自ら自身を防御しつつ、同時に敵奥地を遠方攻撃(deep-strike)でき、敵をくぎ付けにする必要がある」、「同盟国もそうであるべき」等と語っていました
26日の発言ぶりも同様の方向性を示していますが、どの程度実現に向け各方面の足並みがそろうかに注目です。全て必要な事項だと思いますが、盛りだくさんですから・・・
2020年8月時点での新コンセプト作成説明
「統合作戦コンセプトを作成する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-18