2030年代までの構想を含め来年度予算を語る
2026年までに421機を退役、304機を新規導入
米空軍協会機関紙が、5月27日にバイデン政権が発表予定の2022年度予算案に関する米空軍作成の「論点:talking points」ペーパーを入手し、その概要を14日付の長文の記事で紹介しています
内容は2022年度予算の説明ではなく、むしろ2022年度予算要求の背景にある2026年までの予算や作戦機購入計画を描いたもので、年初から始まった「TacAir Study」検討の背景にある各アセットの期待される役割なども説明されています
「論点:talking points」ペーパーは、最も厳しいシナリオと米空軍が想定する、2035年時点で台湾シナリオでの対中国紛争を念頭した各種の分析やシミュレーションを基にまとめられたものとされており、今後米空軍が打ち出す様々な計画の基礎にあると考えられますのでご紹介しておきます
ただ、以下の計画案が米議会で認められるかは予断を許さず、コロナで傷んだ地域経済を背負った利益誘導議員による妨害は十分に予想されます
14日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍が旧式アセット早期引退を急ぐ背景
— 航空アセットの44%が当初の運用寿命オーバーで使用中
— 米空軍航空機の平均年齢は28.6歳 老朽化
— ちなみに米陸軍は15.3歳、海軍は14.4歳
— 豪空軍は8.9歳、英空軍は16.6歳
●以下の早期引退進め、近代化加速でも、年間7-8千億円資金不足
●米空軍が2026年までに退役させたい戦闘機421機
(以下の退役規模は2010年初頭の250機以来の規模)
— F-15C/Dを234機、F-16を124機(残り812機に)
— A-10を63機 (ただし2023年までに:現281機)
●一方で2026年までに新規導入希望304機
— F-35Aを220機、F-15EXを84機
●F-22は2030年から退役開始
— NGADが後継となる方向
— 今も近代化改修中も、20年後はハイエンドで戦えない
●F-15EXの方向性
— 2022年に11機、23年に14機、その後年19機導入
— 遠方からハイエンド紛争に参画、それ以外では制空任務も
— 極超音速兵器や、空対地ミサイルAGM-183A・ARRW搭載へ
— また中国の長射程空対空ミサイルPL-15に対抗
長射程空対空ミサイルAIM-260搭載か
●維持費高止まりのF-35調達ペースは
— 2022年度は48機要求も、以後2023-26年は年43機ペースに落とす
— これにより2023-26年調達機数を240機から220機に削減
— 当初の年間1機維持費見積4.5億円だったが、現時点では2036年でも8.5億円
— F-16とA-10全ての後継機のはずが、維持費下がらず方向転換へ
— 一応空軍は「Block4」が完成したら調達ペース上げると言い訳
●2035年頃から導入MR-X(malti-role Fighter)
— 約600機のF-16後継をイメージ。6-8年後から検討開始
— デジタル設計技術導入で、開発期間短く、短期間使用で維持費抑制
— 早いサイクルで次世代機導入で陳腐化避ける
— ハイエンド紛争には限定的役割も、多用途で任務あり
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この計画の大前提は、次世代制空システムNGADが現在の構想通り有人機と無人ウイングマン機のチームとして運用可能となることと、航空戦力の柱となるF-35の維持整備費が下がることです。
「TacAir Study」がF-35維持費の低減率をどのように見積もって行われているのか不明ですが、第4世代機レベルに低下させるのは不可能との前提に立ち、現在の1700機以上調達の見直しに舵を切るものと想定しています
今後、様々に報道される米空軍を巡る情勢を見る基礎として押さえておきましょう
TacAir study関連
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
「空母艦載機は2/3無人機に」→https://holylandtokyo.com/2021/04/06/100/
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「F-15EXの初号機受領」→https://holylandtokyo.com/2021/03/22/166/
最近のF-35
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07