281機のA-10、234機のF-15C/D、218機のF-15Eを抜く
4世代機の2倍以上の維持費に低下傾向がない中で
7日、Brown米空軍参謀総長が下院予算小委員会で、F-35の保有機数が283機となり、約450機保有のF-16C/D戦闘機に続いて、保有機数で第2位になったと明らかにしました。ちなみに現時点での米空軍F-35調達予定数は1763機です
同時に同参謀総長は、戦闘機の世代混合比率検討を引き続き行っており、ハイエンド紛争を支えるF-35など第5世代機と、それほど脅威の高くない環境で活躍できる第4世代機や「5世代機マイナス機」の最適構成比率を将来の脅威環境を踏まえつつ導き出したいと説明しました
民主党政権が誕生してから、F-35への風当たりは厳しさを増しており、Adam Smith下院軍事委員長は3月の講演で「F-35への投資は金をどぶ(rathole)に捨てるようなもの」と怒りをあらわにし、体制維持小委員会のJohn Garamendi委員長も「調達機数を削減して維持費予算の膨張を抑え、戦力全体の健全性を保つべき」と訴えています
折しも、維持費高騰や稼働率低迷の原因であるF-35兵站支援システムALISの代替として部隊配備が一部で始まっていたODINに関し、開発が想定以上の困難と予算不足に直面して中断を余儀なくされ、再開見通しが立たない泥沼に落ちており、同席した空軍長官代理等の表情もさえなかったようです
7日の小委員会で米軍幹部は同時に、議会の反対で過去数年全く進展がないA-10やRQ-4やE-8C Joint STARSや老朽給油機の早期退役を強く訴え、浮いた資金を次世代装備導入に振り向けたいとのかねてからの要求を繰り返し述べています
ただ、老朽装備品の早期退役に反対する議員たちは、軍事的な必要性を表面上で訴えていますが、選挙区の基地から装備が削減されて雇用や税金収入が失われることを懸念して抵抗勢力となっているのが実態で、中国の言う「民主主義の限界」を体現したような構図となっています
7日付米空軍協会web記事によれば
●Brown参謀総長は、「TacAir検討は戦闘機ポートフォリオを吟味するもので、7種類の異なる戦闘機をどのように組み合わせるのがベストか、将来脅威を踏まえ検討している」と説明し、
●一方で「単一の答えが出るものではなく、脅威に応じた幅を持ったオプションを提示するようなものとなり、米空軍及び関係者の参考に供することとなろう」と説明するにとどまった
老朽装備の早期退役を訴え
●John Roth臨時国防長官はBrown参謀総長と共に、「米国は米空軍装備の近代化を、1年はおろか、1か月も1週間も待つことはできない。現在の競争相手で将来の敵対者を抑止し撃破するには、資源配分の方向を今変えなければならない。変化を加速しなければ敗北するのだ。これが我々の要求だ」と訴えた
●そして「我々は(老朽装備早期退役の)厳しい決断を今行い、資源投入先の(将来システムへの)変更という難しい決定をしなければならないタイミングにある」、「我々は議会の皆さんと2-3年に渡り本件を議論してきたが、近く政府が議会に提出する予算案は、国家防衛戦略NDS遂行を支えるバランスの取れた案であると申し上げておく」と述べて米空軍の考え方に賛同を求めた
●ただ、過去数年間空軍の早期退役要求が認められなかったA-10やRQ-4・Block 30やE-9Cや空中給油機やE-3 AWACS、更に州軍所属のC-130輸送機など具体的な装備名には、予算案提出前でもあり言及せず、各関係部隊と緊密に議論しているとのみ説明した。
●同時に資源を振り向けるべき将来に向けての投資に関しても、一般に言われているKC-47給油機やステルス性のある無人ISR機やABMSなどの具体的装備名にも言及しなかった
●しかし、核抑止の3本柱の一つであるICBM後継のGBSD開発の重要性については、現有のミニットマンⅢの延命が困難であることと共に、改めて臨時空軍長官と参謀総長は強く訴えた/
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老朽装備の早期退役と次世代装備への投資転換は米空軍としてまっとうな要求だと思いますし、選挙区への利益誘導・既得権絶対死守でこの流れを阻む議員たちの姿は「民主主義の限界」そのものの情けない状況ですが、F-35やKC-46の開発状況がこれだけ「グダグダ」だと、米空軍の訴えも相当に迫力を欠く面があります
次の空軍長官候補となったFrank Kendall氏が正式就任し、その剛腕で議会との折り合いをつけてくれることを祈念申し上げます・・・
F-35では以下のエンジンブレード問題も重いです
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「空軍長官候補にKendall氏」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-28
最近のF-35
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
要求性能を満たすのにあと数年のKC-46給油機
「恒久対策は2023-24年から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「今度は燃料漏れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-31-1
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04