2020年9月末までの統計です
州兵や予備役でも感染が多い職種は共通とか
退役軍人は高齢者でも重症化(入院)が少ないとか
13日付Military.comが、米軍関連医療施設が診察や入院治療を行ったコロナ患者に関する統計「Medical Surveillance Monthly Report」を取り上げ、12月号のレポートが2020米国予算年度(~2020年9月末)の統計で、米軍人にコロナ感染者の絶対数が多い職域などの統計数値を紹介しています
コロナ感染者のぼんやりとした統計での紹介になっており、各集団の母数で割った「比率」での比較まで突っ込んだ分析を避けて公表している雰囲気があり、また、2020年9月末までの統計で、昨年秋以降に感染者が急増した後の状況が含まれていない統計であることにも注意が必要ですが、貴重なデータですので断片的な報道ながらご紹介しておきます
13日付Military.com記事によれば
●米軍関連医療機関でコロナ感染(その恐れも含む)と診断されたケースは5万3048名だったが、56%が正規兵、19%が兵士家族、12.8%が新規入隊者、5.8%が退役軍人、4.7%が州兵又は予備役兵士だった
(ただし、昨年9月末以降にコロナ感染者は全米で急増し、今年1月11日現在では同統計での累積患者数は18.9万人にまで増えている)
●軍種別では、所属数が多い陸軍がトップで、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊の順で感染者が多かった。これは所属人数の数の順序と同じ
●米軍内の職種別で感染者の比率を見てみると、正規兵(カッコ内は予備役と州兵の統計値)の感染者数は29970名(2498名)で、最も感染者が多かったのは「repair or engineering(整備や施設分野)」で28%(23.3%)、次に「intelligence or communications(情報や通信分野)」で22%(22.9%)、「combat-specific(戦闘職域)」が14%(7.3%)、その他が20%(30%)となっており、医療職域は9%(8.1%)となっている
●レポートをまとめた陸軍の免疫学専門家は、職種ごとの感染者比率について説明は困難だとコメントを避けたが、一般に、「repair or engineering(整備や施設分野)」は現場業務で在宅勤務が難しく、「intelligence or communications(情報や通信分野)」も秘密情報や機材を扱う関係からテレワークが困難な職種である
●地域別では南部に感染者が多く、正規兵の感染者の62%、新規採用者の64%、州軍の64%、家族の68%、退役軍人の感染者の73%が南部で確認されている
●南部に感染者が多いのは、多くの南部の州でマスク着用を義務付けるのが遅かった(ジョージアやフロリダ州では依然着用義務なし)ことが、理由の一つと考えられている
●米軍関連医療機関に入院した患者は当該期間内に1803名であったが、(高齢者が多い)退役軍人が34%を占めている。しかし退役軍人コロナ感染者が3000名以上確認された中で、退役軍人の入院患者が600名程度(感染者の約20%)で、高齢者が多い割には驚くほど低かった
●退役軍人の入院者比率が低かったのは、一般に軍人は一般市民より健康で、「healthy soldier effect」と呼ばれているが、軍人が退役後も一般市民より健康な状態を維持しているからだろうと、陸軍の免疫学専門家はコメントしている
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これだけの統計数値では何とも言い難いところもありますが、現場仕事の「repair or engineering(整備や施設分野)」や、密閉空間での業務が多そうな「intelligence or communications(情報や通信分野)」で患者数が多いのは感覚的に理解できます
医療職域兵士の感染者が、全体の9%(8.1%)という数値は、全兵士数に占める医療関係兵士数の比率と比較する必要があり何とも言えませんが、恐らく多職種より多いと考えられます
この統計を全国民を対象に広げた統計を、特に日本で見てみたいですし、報道してほしいと思います。人種別とか、職業別とか・・・
併せて、コロナ対応に投入されている病床数と日本全体の病床数の比率(3%程度で、欧米に比して格段に低い)なども、医師会会長の「医療崩壊」アピールよりも伝えてほしいと思います
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