期待値小の暫定対策ソフト改修にボーイングと合意した模様
ハード交換を伴う恒久対策を現在細部精査中
日本も4機導入するのですが・・・
11月24日、米空軍省の調達全般を取り仕切るWill Roper次官補が、米空軍の重要事業KC-46空中給油機の給油操作表示装置(RVS:remote vision system)の不具合解消について、ソフト改修による当面の暫定対策案の評価を終了し、本丸である2023-24年から実施予定の恒久対策(RVS2.0の搭載)に向けて本格的に進むと語りました
KC-10やKC135の老朽化が進み維持費が高騰して必要機数確保が困難になる中、また対中国で空中給油が極めて重要になる中、米空軍の最重要事業として2017年に初号機導入の予定だったものが2年遅れ、更に納入後の運用試験で上記トラブルの他に、機内への部品やごみの放置、燃料漏れ、貨物ロック装置の不具合など複数のトラブルで更に運用開始が遅れている状態のKC-46です
RVSは、従来の給油機では給油捜査員が機体後方の窓から直接相手機を目視確認しながら給油を行っていたところ、KC-46では初めて機体後方のカメラ映像を操縦席内の給油捜査員がモニター画面上で見ながら操作する方式を追求していますが、相手機との遠近感が掴みにくい、夜間は相手機が見にくい、太陽光の角度によっては操作が困難等の不具合が現場から噴出し、実際の試験では給油棒(ブーム)で相手機に引っかき傷をつけてステルス塗装を損傷させる等の問題が多発していました
この問題については、米空軍とボーイング間で協議が難航し、「要求性能を満たしている」かどうかで1年半近く言い争いが続き、空軍参謀総長がボーイング社の乗り込んで直談判する等を経て、2020年4月に「ソフト改修の暫定対策」と「ハード改修追加を伴う恒久対策」の2段階で行う方向で両者が合意していたところです
しかし今日ご紹介する記事からすると、効果が限定的な「ソフト改修の暫定対策」内容についてしぶしぶようやく合意し、2023-24年からやっと開始の恒久対策についてやっとオプションを出そろい、今後地上試験を経て最終決定する「まだまだ」の段階です
25日付米空軍協会web記事によれば
●24日、Roper次官補は内容の確認が完了して合意した「ソフト改修の暫定対策」について、「いくつかのソフト上の機能を追加導入してRVSの機能改善を図るが、根本的に捜査員の視界を改善したり、劇的な変化が得られるものではない」と表現し、真に部隊運用にとって重要な恒久対策(RVS2.0の搭載)に今後は本腰を入れて取り組んでいくと語った
●4月に合意した恒久対策には、追加のカメラ、表示ディスプレー、レーザー距離測定装置等々を含むハードウェアの根本変更が含まれていると同次官補は説明した
●恒久対策の現状について同次官補は、「おおむねすべての側面の設計レビューを完了した」と述べ、残っている重要側面として、操縦席内で給油捜査員が確認しつつ操作する表示ディスプレーについて、2つの最終オプションを精査して今後1つに絞り込むと現状を説明した
●2つのオプションは
—HDテレビに似た高精細液晶タイプの画面
—平行に配置したミラースクリーン、または訓練シミュレータで使用の大きな丸いスクリーン
●2つのオプションを精査して絞り込んだのち、地上の操縦席を模した試験装置に表示装置を設置し、米空軍の要求に応える装置であるかを確認する
●今年4月のボーイングとの合意上では、米空軍が地上で確認し納得した場合、2023年までに12機分の改修装置キットをボーイングが提供し、2024年から機体製造ラインへの投入が始まる予定となっている
●Roper次官補は「恒久対策(RVS2.0の搭載)は、現在のRVS1.0とは全く異なる印象を受けており、前線兵士のニーズに応えられる新しい革新的プログラムである」、「新プログラムに取り組むことに喜びを感じている」と語った
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日本の航空自衛隊も4機導入を決定しているKC-46なので、チマチマと状況をフォローしております。
コロナの影響で航空業界への影響は甚大で、ボーイングは需要が確実な軍事分野が唯一の安定収入でしょうから、誠実に取り組んでほしいものです。
それにしても、導入は2024年以降となる模様で、ざっと5-6年の遅れとなります。空中給油の民間委託の話も出ていますが、現場の苦労がしのばれます・・・
KC-46関連の記事
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「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1