「reality check:現実を見よ」との言葉で現実の厳しさを訴え
大幅減少(decline significantly)が理性的な見方と
2日、米軍人トップのMark Milley統合参謀本部議長がブリッキングス研究所主催イベントで講演し、国防予算の実質的増加を予期すべきではないし、コロナ感染対処で国家として重視すべき事項が国防費以外にも列をなしている状況を認識し、2022年度予算検討では真に米国の防衛や安全保障に影響するものかを厳しく精査していると率直に語りました
この発言を受け国防省筋は、同盟国やパートナー国への事前警告だとコメントし、演習経費の削減は避けられないとコメントしているようです。このような見方は、これまでも国防専門家や各方面関係者から漏れ聞こえてきたことですが、Milley統合参謀本部議長が発言ぶりが極めて率直ではっきりしたものだったので、多くのメディアが取り上げています
下手な説明や解説より、説得力があると思いますので、Milley大将の発言をストレートにご紹介いたします
2日付Defense-News記事によれば
●軍事メディアが11月30日に、米国防省は2022年度予算案の検討前提として、2021年比で2%増の実質前年比レベル据え置き予算を前提としているとスクープ報道をしていたが、Milley統合参謀本部議長は「現実の世界では、3-5%の予算増が物価上昇等を勘案すれば実質的な国防予算増には必要で、装備近代化や即応体制維持には欠かせない」と述べつつ、
●「必ずしもそのようなことは期待できないし、私自身は予期していない。国防省に勤務する軍人も文民職員も、国家予算や国防費がどのような現実に直面するか現実を良く直視すべきである」、「経済情勢と米国情勢を俯瞰的に見つめ、何が起こるか考えれば、良くて国防費は横ばいで、大幅に減少する(decline significantly)と考えるのが理性的な見方であろう」とも同大将はブリッキングスで語った
●更に「米国防省は限られた予算で、どこで、何をなすかを厳しく精査しなくてはいけない」、「米国は海外への展開や基地や作戦に多くを出費しているが、それが本当に米国の防衛に、米国の安全保障に必要なのか? その演習は本当に重要なのかを考える時だ」
●「私は真剣に取り組んでいる。何が必要で重要かを厳しく精査している」、「できる範囲で全力で考え、それに従って米軍を導くことに何の迷いもない」と語った
●そしてMilley統合参謀本部議長はコロナ感染の国家への影響の大きさを諭すように、「私は強くて能力の高い米軍を持つべきだと信じている。しかし同時に強い国家経済も必要だし、打たれ強い国家である必要もある。優れた教育体制も必要だし、社会インフラも欠かせない。全てが国防省の裁量の範囲外にある事項だ」、
●「米軍は国家経済の上に存在するものだ。今コロナ感染の嵐の中にあり、国家経済は下降状態にある。失業率は高く、すべてが厳しい状況だ。今最も必要なのはコロナ対処であり、経済に新たな力を投入する必要がある。それが実現できたなら、後に国防や軍備に新たな投資が注ぐことができるだろう」と語った
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軍種間の予算獲得争いを戒める意味も込めた発言かと思いますが、何しろ米軍トップで、大統領に対して軍事的助言を行う最高責任者としての発言ですので重みが違います
普通なら、コロナ厳しき中でも、中国やロシアの動向を訴え、国防費は今こそ重要だ!・・・と訴えることろでしょうが、そこをあえて「現実直視」を訴えるあたりは、予算獲得のパワーゲームになれば、政治家やロビイストの力関係に影響されてしまえば、限られた予算の中で米軍の体制が危ういとの強い危機感があるからでしょう・・・
危機感ひしひしです・・・・
バイデン政権の国防政策予想
「必要な国防政策を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-12
「米議会で中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
「バイデン政権で国防政策はどう変わるのか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09