平均未承認空席期間は1980年代以降で最長
8つの次官級ポストの内、5つが議会未承認
20日付Defense-Newsは、米国防省の政治任用ポスト60個の内、4割の24ポストが米議会の承認を得ない臨時代理又は代行者(acting or performing-the-duties-of capacity)で占められる異常な状態のまま、来年1月の政権交代を迎えるだろうと紹介しています。
人選や議会承認にレーガン政権時代以降40年間で最長の時間を要している理由として記事は、辞任者や更迭が多いこと以外にも、政権が指名する候補者の質が低く承認審議が難航していることや、政権自体が議会承認を重視せず臨時の状態を気にしていないこと、が背景にあるとの専門家意見を紹介しています
議会未承認24ポストの中には、議会承認待ちの様々な段階にあるポストが「11個」あるようですが、米議会の年末までの稼働日数や他の優先課題等を考えれば、これ以上正式承認者が出る可能はなく、実質2か月足らずの任期のために承認を進める意欲をだれも持ち合わせていないのが現状だそうです
専門家は、臨時や代行者がいて業務を進められる部分はあるが、大きな課題になるほど、政府機関内や米議会との調整に「議会承認を受けた」立場が「見えない力」として必要であり、また文民重要ポストに未承認者が多いことで、軍人(統合参謀本部)の発言力が強くなりシビリアンコントロール上の懸念も出てくると教科書的な問題点を指摘しています
実態として「多数の未承認ポスト」の影響を理解していませんが、なし崩し的に組織制度が変わることには不安があるので、次期政権では解消されるでしょうが、未承認ポスト24個と解説記事の概要をご紹介しておきます
なお、国防省の本部(国防長官室)には、大きく6つの部署(政策、人的戦力管理、調達&兵站、研究開発、情報、改革Reform)があり、それぞれのトップに次官が指名され、監察官(Inspector General)や会見監査(Comptroller)と合わせて8つの次官級ポストがあり、その5つが未承認状態です。また陸海海軍省も次官補レベルまで政治任用のようで未承認ポストがあります。
60ある政治任用ポストで未承認の24個は
●国防長官
●政策
Undersecretary of Defense for Policy
Deputy Undersecretary of Defense for Policy
Assistant Secretary of Defense for Legislative Affairs
Assistant Secretary of Defense for Space Policy
Assistant Secretary of Defense for Readiness
Assistant Secretary of Defense for Indo‐Pacific Security Affairs
Assistant Secretary of Defense for International Security Affairs
Assistant Secretary of Defense for Nuclear, Chemical, and Biological Defense Programs
Assistant Secretary of Defense for Special Operations and Low Intensity Conflict
Director of Cost Assessment and Program Evaluation
●人的戦力管理
Deputy Undersecretary of Defense for Personnel and Readiness
Assistant Secretary of Defense for Manpower and Reserve Affairs
●調達&兵站
未承認なし
●研究開発
Undersecretary of Defense for Research and Engineering
Deputy Undersecretary of Defense for Research and Engineering
●情報
Undersecretary of Defense for Intelligence and Security
Deputy Undersecretary of Defense for Intelligence and Security
●改革
未承認なし
●監察官や会見監査官
Inspector General of the department
Undersecretary of Defense (Comptroller)
Deputy Undersecretary of Defense ‐ Comptroller
●陸海空軍省
Undersecretary of the Navy
Undersecretary of the Air Force
Assistant Secretary of the Air Force for Space Acquisition and Integration
General Counsel of the Army(米陸軍法務官)
20日付Defense-News記事によれば
●人選と承認に要した議会審議時間を見てみると、オバマ政権時代には平均で、人選に5か月、承認手続きに2か月だったが、トランプ政権ではそれぞれ、7.5か月と3.5か月要しており、トランプ政権の時間はレーガン政権以降で最長となっている
●これを次官級ポストに絞って見てみると、トランプ政権は人選と承認で合計約6か月と、オバマ時代の2倍の時間を要している
●人選が終わって議会承認を申請している段階にあるケースが11ポストあり、11月16日に申請された国際安全保障担当次官補ポストから、3月に申請されて承認の見込みがないものまで、様々な段階のものがあるが、今後政権交代まで米議会で承認審議が行われる見込みはない
●このような状態になっている理由について政治任用者を審議する上院軍事委員会のTim Kaine議員(民主党・バージニア州)は、「様々な理由がある。政権側が更迭するケースや辞職者が多いことに加え、後任候補者が共和党優位の上院でも承認を躊躇するレベルであることも影響している」と述べ、
●また「トランプ大統領が上院の審議にさらされる承認手続きを好まず、臨時や代理で良しと考えるタイプの人物で、戦略的な業務が多い国防省ポストに関してはこの傾向が強い」ともコメントしており、臨時の政策担当次官である反イスラム姿勢が顕著なAnthony Tata氏の承認手続きが夏にとん挫したままでも、継続して「臨時」で職務を継続している例を挙げている
●共和党系のシンクタンクAEIのMackenzie Eaglen女史はこの現状に関し、「大きな官僚組織であるペンタゴンは、ある程度の空席状態には対応してきた」と述べる一方で、正式な承認手続きを経た官僚でないと乗り越えられない重要な政策調整の「見えないゴールポスト:invisible goal posts」が障害物として厳然と存在する」と指摘している
●また文民統制の観点から、承認を得ない国防省官僚が増えることで、ペンタゴン内での文民官僚の影響力が低下し、文民と軍人の力関係のバランスが変化することに関する懸念に触れ、次期政権ではこれ以上議会承認手続きを経ない臨時官僚が増えることに警鐘を鳴らしている
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「見えないゴールポスト」や「文民統制」の視点での懸念はあるのでしょうが、政策担当次官との国防省No3ポストに加え、研究開発や情報担当次官のポストでも臨時や代理で回っている(らしい)現実から、議会承認を軽視する方向にならないか注視する必要があるのでしょう
トランプ大統領がツイートを多用したことで、バイデン氏のツイートが少ないと評価する人が出てくるくらい従来の「常識」を変えたトランプ政権ですから、後の人は色々大変そうです。
バイデン政権の国防長官最有力候補フロノイ女史の思考
よろしくお願いします