米国政府全体で国内採掘処理活性化や備蓄に資金投入へ
国防省も米議会と予算枠や戦略巡り議論
9月30日、トランプ大統領がレアアース(希土類)確保に関する大統領令を発出し、幅広い産業製品から軍事装備に欠かせないレアアースの世界市場を中国が牛耳っている危機的な状況に警鐘を鳴らし、米国政府を挙げて米国内採掘処理を活性化させ備蓄を増やすとともに、中国産の輸入を抑える関税などの措置検討に入りました
これを受け、重要な装備・兵器(ミサイル、弾薬、極超音速兵器、電子機器の放射線防護から携帯電話まで多様な装備)に不可欠なレアアース17種類を重要素材と指定している米国防省も、1日にLord調達担当次官が上院軍事委員会で、レアアース確保備蓄に向けた戦略作成や柔軟な予算運用が可能となるよう議会の協力を求めました
大統領令は「極めて重要な鉱物資源を、敵対的な国からの輸入に過度に依存している現在の状況は、米国の安全保障、外交、経済に対する尋常でない極めて大きな脅威である」と表現し、トランプ政権が指定している35種類の鉱物資源を、貴重でありその確保が危うくなる可能性が高いと危機感を表しています
実際、米国はレアアースの80%を中国から直接輸入しており、残りの部分にも第3国経由で中国産を輸入している鉱物が含まれているなど、米中対立が激化し緊張感が高まる中、予断を許さない綱渡り状態が続いているようですが、以下では米議会でのLord次官の発言をご紹介します
1日付Defense-News記事によればLord次官の議会で
●米国のレアアース確保戦略には、米議会による法的根拠設定と予算配分措置を伴って、特定レアアースの国家備蓄推進、新たな促進政策と規制緩和による米国内のレアアース処理施設の再立ち上げ、関連の処理技術や代替品の研究開発を推進する等の必要があり、米議会の支援が欠かせない
●短期的には、国内埋蔵レアアースの採掘量増加、緊要なレアアースの国家備蓄増量推進、更に代替資源の探求研究が考えられる
●米国は貴重な国防関連のレアアース備蓄を拡大する途上にある。コロナ感染の結果、米国民は重要な物資や製品の調達先を選ぶ重要性に気づくことができた。
●昨日発出された大統領令を根拠とし、関係政府機関との連携を図り、これまで既に進んでいる国家備蓄の更なる増強と種類拡大に向かう
●来月もう一度米議会にお邪魔し、具体的にどのような支援を議会にお願いするかを説明したい
レアアース確保に関し米国防省は議会に対し、レアアースを使用する兵器の購入予算の増加と、極超音速兵器予算への上限規制の撤廃を要望し、また予算使用の裁量枠拡大を願い出ている
//////////////////////////////////////////////////
米国の国内レアアース採掘処理が廃れたのは、中国埋蔵量が膨大で価格競争で太刀打ちできないからだと思うのですが、米国内処理施設再興や採掘増加対策で、どれだけ中国産の穴を埋められるのか「?」です。
代替品もそう簡単に見つかるような気がしませんし、それこそ国際協力で中国に対抗したい分野でしょう。日本の海底資源開発も貢献できるかもしれません
基礎知識不足ですが、重要な米国の動きですのでご紹介しておきます
「中国がレアアース輸出規制へ」
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-06
米中関係を考える記事
「CSBA対中国戦略レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「2019年アジア安全保障会議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-31-1
「グーグルからAI技術流出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-23