12月の予定とされてのに。秘密裏に前倒しか
9月初旬に2回目を終えたばかりの中
既存演習「Valiant Shield」の場を活用して
9月25日付米空軍協会web記事は、12月予定だったはずの第3回目のJADC2又はABMS試験演習が、9月14-25日の演習「Valiant Shield」に併せて実施され、ハワイ・グアム・マリアナ諸島エリアで、陸海空海兵隊兵士11000名、航空機100機や複数の艦艇が参加して実施されたと報じています
JADC2(Joint All Domein Command and Control)
ABMS(Adavanced Battle Management System)
ABMS試験とか、JADC2(統合全ドメイン指揮統制)、時には「連接マラソン」とも呼ばれるこの実験演習は、米空軍の各種シミュレーションやウォーゲームの結果から、クラウド技術やAI技術を活用し、4軍で情報や指示を迅速に共有し、装備を有機的に連接することが大きな戦闘能力向上につながるとが判明したことを受け本格化した演習です。
演習では宇宙、上空、地上、水上、水中の多様なセンサーやアセットを連接して指揮統制や作戦運用を迅速に行う各種検証を行っており、昨年12月の1回目は「米本土への巡航ミサイル攻撃対処」、2回目は9月初旬に「宇宙軍アセットも交えた巡航ミサイル対処」を中心テーマに成果を上げており、第3回目は当初12月と関係者が語っていました
今回なぜ3回目が事前情報なしに実施が早められたのかは不明ですが、太平洋を舞台にするということで中国への情報漏れを恐れた、またはコロナの影響等で当初の演習目的を1/3削減した影響で、演習「Valiant Shield」を活用できることになった等々の背景を妄想・邪推しております
最近の米国防省や米軍は、中国等を利することがない様に、演習や装備開発に関する公開情報を激減させており、3回目の本演習についても軍事記者の取材に基づく「断片情報」の羅列しかありませんが、皆様におかれましては、関連過去記事と併せ、想像力をたくましくしてご覧ください
9月25日付米空軍協会web記事によれば
●対中国の体制を訓練するValiant Shield演習は、太平洋地域で各軍種が保有する目標監視情報、ターゲティング情報などなどを円滑に相互にやり取りする訓練の機会を提供した
●米太平洋海軍司令部は、「この訓練を通じ、陸海空サイバードメインで、目標の探知追尾・目標照準を様々な任務に応じて連携して行うことを実環境で訓練できた。訓練には、対水上作戦、対潜水艦作戦、防空、着上陸など複雑な作戦任務が含まれていた」とコメントを出している
●破棄予定のフリゲート艦Curtsを、(コーディネートされた)米海軍と空軍の航空機、複数の巡洋艦や潜水艦からの攻撃で撃沈したり、海兵隊からの目標情報に基づき、海軍艦艇から発射の巡航ミサイルで島の地上目標を攻撃したりした
●これら統合作戦は、全軍種から差し出された兵士で構成される前線指揮所「Multidomain Operations Center-Forward」からの指示統制で実施され、空母戦闘群から米空軍作戦機までと連携していた
●空母戦闘群司令は「F-22は素晴らしい航空機で、マルチドメイン指揮統制の恩恵を受け、米海軍はこの5世代機をテコに大いに戦力アップが出来た」と述べている
●人工知能を活用した新たなソフトも効果的に使用され、作戦命令ATOに記された空中給油の場所と時刻等を自動的に抽出して操縦者に伝達することも行われた
●また指揮所では、太平洋上に分散して設けられている複数の様々な基地の保有器材や燃料、展開航空機の状況等々の情報を、リアルタイムで更新して指揮官に提供して判断に資するアプリが提供され、施設不十分な分散基地での作戦遂行等に貢献した
●データ共有を促進するため、KC-46空中給油機に「クラウドnetwork-sharingアプリ」を搭載して「連接」に活用したり、F-22やC-17をハワイ周辺でのデータ共有の前線「ノード」として活用したりもした
●このように米軍は、広大なアジア太平洋地域に分散するアセットを、妨害電波や敵の攻撃に邪魔されながらも連接して迅速に作戦を遂行する手法を求めて試行錯誤を行っている
●またこの試行錯誤に新たな知見を取り込むため、これまでに60以上の企業を3回の演習に参加させ、実戦環境でのテストを試みており、9月21日の週には追加で15企業と、データ解析、通信などABMS関連の技術実証に向けた契約を結んでいる
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コロナでのこの実験演習全体のスケジュールが遅れ、部隊調整が難しくなり演習目的を1/3削って実施していることと、12月の予定を早めて突然3回目が実施されたことの関係はよくわかりませんが、予算獲得の為の米議会説明用に実験結果が必要なことも理由かもしれません
いずれにしても、全世界的な米軍再編と共に、「新たな統合作戦プラン」を年末までにまとめようとのエスパー国防長官の強い意志を背景に、様々なことがペースを上げて検討されています。
ついていくのが大変ですが、「イージスアショア後継」を巡る局所的な議論だけではなく、日本はもう少し大きな視点で考える必要があると思います
全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-05
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08-1
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「米空軍の夢をCSBAが応援!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメインC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24