米国の「Operation Warp Speed」責任者が語る
議論百出不可避な難問に挑む姿勢を語る
まず大方針は「政治的な関与を排除する」
6日、トランプ大統領からコロナワクチン完成時のワクチン配分や接種要領、接種優先順位を司る「Operation Warp Speed」責任者に任命されているMoncef Slaoui博士が、検討状況について語り、「Operation Warp Speed」の重要事項を決定する第3者的な科学的会議体(independent scientific summit)の立ち上げに取り組んでいる段階で、まだ具体的な決定は行っていないと述べつつ、原則的な考え方を披露しました
「Operation Warp Speed」はSlaoui博士をトップにし、ロジの専門家である米陸軍マテリアルコマンド司令官のGus Perna大将をCOO(業務執行責任者)に据える体制で5月にスタートしていますが、Slaoui博士はロンドンに本社を置く世界有数の規模を持つグローバル製薬企業「GlaxoSmithKline」の前トップだった人物だそうです
日本でも「コロナワクチンを1.2億回分確保した」との政府発表があったりしますが、3か月から半年程度継続する効力を得るには2回程度以上の接種が必要とも言われており、「誰を優先し、どのように接種を進めるか」は議論百出不可避な難問であり、「総論賛成、各論反対」の課題に直面する前に、今から考えておくご参考にご紹介します
10日付Military.com記事によれば
●シンクタンクAEIからの音声配信でSlaoui博士は、まだ「Operation Warp Speed」の初期段階にあると説明し、一部で政府関係者が語ったと報道されている、軍人や高齢者や特定グループが優先接種を受けるとの情報を否定した
●ただ同博士は、国立衛生研究所のFrancis Collins所長等と議論を続けてきたことを紹介しつつ、「このきわめて重要で緊要な(接種優先順位の)問題について、現時点で明確に私が言えるのは、この問題が政治的な意図を基に決定されてはならないという点である」と述べた
●そして同博士は「米国の学際的な英知を集めた会議体で、疫学的、倫理的、生物学的な面から、如何に国民にベストなワクチン提供を行うかを議論する」、「ワクチン配分に関する、科学的で第三者的な知見の創出と提供に尽力する」と説明した
●更に同博士は、「2021年の2月末までに、米国のリスク国民に免疫を提供できる十分な量のFDA認可ワクチンが入手できることを願っている」、「事実とデータがすべてであり、いつワクチンが完成して入手できるか、10月かもしれないし、11月か12月になるかもしれない」
●そして「これが現時点での答えである。また私個人としては、私が不適切だと考えることを強制されたなら、私は直ちに辞任するつもりでいる」とも言及した
●6月に匿名の政府関係者は、「連邦政府機関として我々は、弱い立場の人、ワクチンが必要でも金銭的に手が届かない人でも接種が受けられるようにすることが役割であり、社会インフラにとって不可欠な人、国防に従事する人にもワクチンを提供することが我々の義務だと感じている」とメディアに発言していた
●COOのGus Perna大将は任命された5月に、例えば数百万回分のワクチンを2021年年初までに梱包し、輸送し、配分する業務は膨大な労力を要する任務であるが、「不可能ではない。米国民と海外の同盟国に貢献したい」と語っていた
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医療従事者への優先接種に異論はないでしょうが、重要な社会インフラ関係者や国防関係者の範囲は難しい線引きでしょうし、高齢者や持病を持つ人(特に不摂生が原因の病の場合)に優先接種するくらいなら、次の社会を担う子供や若者を優先してほしいと考える意見は少数派ではないはずです。
日本経済の原動力となる「働き手」の一群をどのように扱うかも難しいでしょう。職種や業種で区別することは容易ではありませんし、失業者や引きこもり人材、フリーランスの扱いもメディアが騒ぎそうな題材ですし、外国勢力も社会の分断を狙って介入するでしょう。
補助金の配分と同じで、マイナンバーの普及が進まない日本では、対象者の特性別把握が難しく、時間がかかる可能も懸念されます。つまらない評論家やタレントの意見を垂れ流されるのにも「耐えられない」感をお持ちの方も多いでしょうし・・・。
「コロナで安全保障環境は激変する」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-25