米国以外の核合意国に経済制裁緩和要望
米国は核合意に戻るべきと考えます
5日、国際原子力機関IAEAが加盟国にイラン核開発に関する非公開レポートを配布した模様ですが、早くもAP通信がその内容を入手して報道し、イランは米国が2018年に抜けた核合意の全ての項目に違反しているが、イラン核施設へのIAEA査察には協力的だとのレポート内容を紹介しています
この核合意(JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)は2015年に米英独仏中露とイランの間で結ばれたもので、イランが核兵器開発を行わず、同国核施設へのIAEA査察でその遵守を確認できる限り、イランへの経済制裁は解除するというもので、世界がもろ手を挙げた歓迎したのですが、トランプ政権の米国が抜けて経済制裁を強化したことを契機に、イランは他の4か国の説得にもかかわらず核開発を再開したと伝えられていたところです
イスラム過激派が台頭する中、過激派の背後にイランの影があるのは事実ながら、イスラムの大国であるイランと西側の関係が安定することは世界全体の安定に大きく寄与することから、いろんな疑惑報道がある中でも、この核合意(JCPOA)を支持する専門家は多く、トランプ政権による撤退の際には、「オバマ政権の実績を否定することが目的の無茶苦茶な行為」として非難の声が上がりました
まんぐーすも、TPP交渉不参加と核合意からの撤退は、今からでも考え直してほしいと思います
AP報道引用の5日付Defense-News記事によれば
●核合意で許容されている低濃縮ウラン貯蔵量が202.8㎏であるのに対し、5月20日現在で1571.6㎏をイランは貯蔵している。この量は2月19日時点の1021㎏から大幅に増加し、許容量をはるかに超えて増加している
●またイランは、同合意で各濃縮レベルを3.67%以下と規定されているにもかかわらず、4.5%にまで濃縮して純度を挙げている。更に、重水の貯蔵量でも合意の上限を超えており、核合意のすべての項目で既定の範囲を超えて核開発を進めている
●核合意の究極の目的はイランの核兵器開発(イランは追求していないと主張)を阻止することであるが、イラン自身は核合意違反をオープンにし、IAEAによる関連施設のモニターや査察を受け入れている
●イランはコロナ感染で大きな被害を受けているが、IAEA査察官の移動用にチャーター機を準備するなど核合意に基づく査察や監視に「きわめて協力的:exceptional cooperation」だとIAEAはレポートで述べている
●イラン政府は違反の指摘に関連し、米国離脱に伴い発動されたイランに対する厳しい経済制裁を埋め合わせるような、経済的インセンティブ提供を他国に求めている
核兵器運搬手段開発に関する米露の対立
●4月22日にイラン革命防衛隊が行った人工衛星打ち上げに関し、米国は、イランによる核兵器の運搬手段となる弾道ミサイル開発関連活動を禁じた2015年の国連決議に反するとイランを非難している
●米国の国連大使は「衛星打ち上げと弾道ミサイル技術は同じものであり、イランは核兵器運搬手段の開発を行っている」、「イランの弾道ミサイル開発は地域の緊張を高め、国際社会への脅威である」、「国際社会はイランに説明責任を果たすよう求め、イランへの制裁を強化するよう動くべきだ」と国連安全保障理事会に議長に書簡で要請している
●これに対しロシアの国連大使は、米国の非難はミスリーディングで、イランは宇宙開発の権利を有していると米国を非難し、「イランは現在・過去・未来にも核兵器を保有することはない」、「イランはIAEAによる査察を最も受けた国家である」、「イランが核兵器運搬用の弾道ミサイルを開発や試験したことはない」と反論している
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ロシアが援護射撃していると、とたんに疑いの目で見たくなりますが、イランがIAEAの査察に全面協力していることは注目に値します
イランはコロナで大きな被害を受けており、公になっている死者の10倍とか、衛星写真により数万人規模の墓地造成が国内各地で確認できるとか、秘密のベールの下で、国として厳しい状況下にあることは間違いなく、いがみ合わないで、妥協点を見つけるチャンスだとも思うのですが・・・
イランが含まれる記事
「CSIS宇宙兵器の分類案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-28
「米国防省のイラン軍事力レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22
「米爆撃機駐留停止の背景にイランの攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-30
「イランにもF-4ファントム最終章」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-12