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イランによる1月のイラクal-Asad基地攻撃がきっかけ!?
4月29日、米空軍の大型爆撃機を保有するGSC(Global Strike Command)のTimothy Ray司令官が、米空軍協会ミッチェル研究所のオンラインイベントに出演し、中東やアジアでの爆撃機駐留を中止した件について語りました。
もちろん「いつでも、どこでも、必要であれば直ちに大型爆撃機を展開する」との姿勢に変化なく、同アセットの運用方針を「strategically predictable and operationally unpredictable」な「Dynamic force employment」方式に変更しただけ、との主張ではありますが、敵対国ミサイルの射程内に貴重なアセットを常駐させるリスクを、イランによる1月のイラクal-Asad基地攻撃で思い知ったのも事実のようで、一つの大きなきっかけであったと示唆しています
また、核搭載能力がない(START条約で制限された)B-1爆撃機が、多彩な兵装が可能で、ギラ付かない点で使用しやすいとの説明もしていますが、昨年稼働率が2割程度にまで落ちた同機をフォローしているようにも見え、いろいろと配慮がある語りぶりで、色々想像を掻き立てられるお話ですのでご紹介しておきます
まず、4月21日の記事でご紹介した、大型爆撃機撤退に関するまんぐーすの「邪推」をもう一度ご紹介し、後にTimothy Ray司令官お話をご紹介します
邪推:Dynamic force employment方式への変更理由
●貴重な戦力である大型爆撃機を、3-5機もイランや中国の弾道ミサイル射程内に派遣しておくのはリスクが高いし、情勢が緊迫してきてから撤退させては、同盟国に与える印象が悪いので、米本土待機に変更した。
●老朽化して部品調達も難しくなっているB-1爆撃機の稼働率が、2019年には一時は2割以下に落ち込むなど、戦力を分散しかつ稼動機数を確保する必要があるCBPを維持するのが困難になった。
●20年以上続く中東での戦いのため、空軍兵士の海外派遣期間や頻度が高止まりしており、操縦者や兵士の流出に繋がっていることから改善する必要があった。
●駐留的派遣CBPを維持するためのコストが高く、予算不足の中で遣り繰りが困難になった
GSCのTimothy Ray司令官は中東派遣に関し
●2001年からカタールのアル・ウデイド基地に大型爆撃機を展開させ、2016年にはB-52を展開可能にするため滑走路の拡張工事も行ったが、作戦運用上の現実を地域の方程式に入力すると、射程内から退いて、かつ我が航続距離内のに置くインド洋のディエゴガルシア配備にするとの解に1月時点では到達した
●カタールのアル・ウデイド基地は、アフガンやイラクやシリアでの対テロ作戦を支援するのに便利な立地にあり、インド洋のディエゴガルシアからだと、作戦地域での行動時間や規模が限定される
●我々は、1月のイラクal-Asad基地への攻撃当日にカタールのアル・ウデイド基地に派遣することになっていたB-52部隊を、在クウェートの第379派遣航空団の指揮下に置いたまま、ディエゴガルシアに展開させることと決定した
●イランが1月にイラクal-Asad基地攻撃を攻撃した。我々もイランにイラクやサウジまでを射程に収める攻撃能力があること承知していたが、攻撃の意思を感じたのは事実である。イラクal-Asadによってミサイル射程内に爆撃機を展開させなくなったのではなく、長く検討を続けてきた結果として、ディエゴガルシア配備も含めた継続的な駐留派遣を中止する判断をした。
●大型爆撃機3機種を保有するJames Dawkins第8空軍司令官も、我々は敵対国のミサイル射程内の基地に爆撃機派遣を完全に排除したわけではなく、なるべくなら脅威を避けたいとの思いがあるだけで、必要があればどこへでも展開する準備はできていると3月に語っていた
●ちなみに、1月からディエゴガルシアに展開したB-52部隊は、90ソーティー以上の任務を行い、命じられた任務を100%果たしている
アジア太平洋下でのCBP中止関連
●(4月16日にCBP:Continuous Bomber Presenceを終了した後、B-1が日本を周回するような飛行を行っているが、核搭載可能な爆撃機の展開がないとの指摘に関し、)B-52爆撃機部隊が他に派遣されたばかりで「リセット」が必要な時期に当たっただけで、核搭載可能爆撃機の派遣を避けているわけではない
●B-1爆撃機は異なるタイプの能力を持ち、スピードが速く、長射程対艦ミサイルLRASM(AGM-158C)やJASSM-ER(AGM-158B)など異なるタイプの兵器を搭載できるなど、パートナー国に大きなメリットをもたらしてくれる
●核搭載可能機種も定期的に展開させることになる。B-52はたまたまタイミングが合わなかっただけで、B-2派遣は少し重い。B-2は強い話題性を持つアセットである。核搭載型を持ち込むことは、幾らかの人達に警告的なメッセージと取られることがある。
●B-1は特徴的な能力とともに、B-52が着陸できない場所に展開可能で、B-52より少ない兵士でサポート可能であることもあり、アジア太平洋地域でより活動してもらうことになろう
●今、すべての大型爆撃機が米本土に戻ってきたが、これにより展開先では活用できないシミュレータ訓練や射爆撃場での訓練を行うことが可能となり、部隊をより整った状態に準備できる。
●今後は、3機種すべての爆撃機をアジア太平洋地域で見ることになろう
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中東での大型爆撃機の常駐が終了したのが2019年3月で、今年1月のイランによる攻撃を大型爆撃機常駐に関連付けるのは時期的にすっきりせず後付けの説明のような気もしますが、イランとの緊張は昨年から高まっており、少し大きな流れで考えていただければと思います
「邪推」の中で、「シミュレータ訓練や射爆撃場での訓練」の重要性や、後付けのようなB-1の有用性には思いが至りませんでしたが、米軍の考え方を如実に反映するであろう大型爆撃機の動きを、あれこれ邪推しながら眺めてみてはどうでしょうか・・・
北の「かりあげクン」について何か明らかになった時など、にらみを利かせるために大型爆撃機が飛来するかもしれません。真打らしいB-2なんかどうでしょうか?B-1が展開したとの話もあるようですが・・・
グアムCBP関連の記事
「16年続いた大型爆撃機のグアム駐留CBP終了」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-19
「アジアへの空軍戦力派遣」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-14
「グアムに大型B全機種勢揃い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-12
「B-2がCBPでグアム展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-18
「CBP受入の常設部隊設置へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13-1
「爆撃機による外交」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-04
中東でも
「18年継続の爆撃機中東派遣終了」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-30-1
「対イランに中東へB-52短期派遣」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-08
爆撃機ロードマップ
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春のBomber Vector」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2