米特殊作戦軍は対中露にどう立ち向かう

物理的戦いを避けるために中露に作戦する
Psychological.jpg5月17日付Defense-Newsが、米軍の特殊作戦軍関係者による議会証言を取り上げ、国家防衛戦略NDSの指針を踏まえ、対テロ作戦から対中露への力点移行を行う「U.S. special operations forces」の様子を紹介しています
特殊作戦軍というと、ビンラディンを襲撃した強襲部隊や小型ボートで敵地潜入を試みる工作部隊のイメージかもしれませんが、ここで語られている「U.S. special operations forces」は、「影響力作戦」に従事する心理作戦部隊や広報戦略部隊をも含む広い任務を担う部隊です
AC-130 2.jpg部隊の性格から具体的なことは公に語られませんが、ロシアがウクライナで展開した「ハイブリッド戦」に代表される、武力と非武力のサイバー・宣伝・心理戦などを組み合わせた相手に対抗する部隊を想像していただくのが良いのでしょう
世界80か国に展開し、「少数の部隊で大きな違いを生み出せる」と司令官が語る特殊作戦軍の将来方向を、国防省担当次官補代理と特殊作戦軍司令官の話からのぞいてみたいと思います
5月17日付Defense-News記事によれば
近く特殊作戦軍の状況レビュー報告書が議会に提出される予定の中、Mark Mitchell対テロ低列度紛争担当次官補代理とRichard Clarke特殊作戦軍司令官が下院の情報と新たな脅威小委員会で証言した。
Mitchell.jpg●そして同次官補代理は、国家防衛戦略NDSの方針に沿った特殊作戦軍の最も価値ある役割は、中国やロシアが世界の係争地域に浸潤するのを防ぐために、関係国との関係を構築することであると述べた
●またClarke特殊作戦軍司令官は、一方で過去20年近く特殊作戦軍が注力してきた対テロ戦を疎かにすることは出来ず、対中露とのバランス追及が重要になるとし、併せて任務の分担ややり方を検証することで、負担が増加する兵士の海外派遣期間を削減することも検討しているとも述べた
●同司令官はまた、「対テロの最前線に我が軍は立っているが、対中露の前線では、NDSが示唆する物理的な衝突を避ける方向に沿って、我が戦力の特徴を生かした役割をより強化していくことになろう」と表現した
●そして同司令官は、他のメジャーコマンドであるサイバー軍、戦略軍、輸送軍、各地域コマンドと共に、特殊作戦軍がどのようにかかわっていくのがベストか議論しながらNDS任務に取り組んでいると語った
Clarke.jpg世界各国とのかかわりについて同司令官は、「特殊作戦部隊は同盟国等とのネットワーク構築と各地での地位確保において他にないユニークな特徴を持っており、何よりも、平時において各地域で影響力と正当性を勝ち取る役割に適している」とも説明している
●同軍はまた、フロリダ州タンパにある「military information support operations center」で、国務省の世界関与センターと協力し、ロシアが発する誤情報や情報作戦に対抗する役割も果たしている
●更に両名はアフリカでの例を挙げて今後の同軍の任務拡大を語り、「対テロをメインに派遣している我が軍部隊はまた、ロシアと中国からの影響力に対抗する役割も担っている」と述べ、「対テロと対中露のバランスを取りながら、広い視野から効果的な資源投資を試みている」と説明した
●他国との協力強化について同司令官は、「特殊作戦軍は小規模部隊やユニットで相手国に大きな変化もたらすことができる点が特徴だ」と述べつつ、中国とロシアの影響力が全世界に及んでいることから、「特殊作戦軍の要員は世界80か国以上で活動している」と現状を説明し、議会承認を得てフィリピンでも対テロを中心に活動範囲を拡大したが、中国の勢力拡大を防止する点でも重要な役割を担っている言及した
EC-130H3.jpg●更に同司令官は、大量破壊兵器対処の任務も増加して負担が増加しつつあると訴え、他軍種を含めて任務分担の見直し・検討が重要だと述べ、例えば米陸軍の関連部隊に他国の治安部隊支援任務を引き継ぐことも協議していると述べた
●そして同司令官は、「特殊作戦軍は、政治的に機微な地域に小規模な単位で展開し、目立たないように他国の特殊作戦部隊を育成するような役割に注力すべきだ」と説明した
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特殊作戦軍の影響力作戦や心理作戦部隊の特殊な装備には、対象エリアで宣伝ラジオ放送を行ったりビラを投下するC-130などが含まれており、SNSやサイバー世界で活動する役割を負った部署も存在するであろうと推察いたします
まだまだ勉強不足の分野で、日本にも必要ながら未着手の分野だと思いますし、ハイブリッド戦に対抗する部隊ですので機会を見て取り上げたいと思います。
既に中国の浸潤をしっかり受けているのでは・・・と思わせる政党や著名人がメディアでほえている今日この頃ですので・・・
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