議会側からの「良く考えろ!」との先制パンチか、最後通牒か?
航空機投資の半分を戦闘機が占めて良いのか?
今の戦闘機の姿とPCAは異なるようですが・・・
米議会予算室(CBO:Congressional Budget Office)が、公的な機関としては初めて、2020年代後半には登場が予期されている次世代制空機PCA(Penetrating Counter Air)の価格予想を見積もり、F-35価格の3倍以上となる1機330億円との数字を明らかにしました
PCAについては、2016年に米空軍が「Air Superiority 2030 flight plan」で考え方を打ち出し、その後空軍幹部が概念的に語った「戦闘機との呼び方は相応しくない」、「6世代機との名称も適さない」「1機種の後継機ではなくfamily of systemsで対応」、「ネットワークで戦う」「最新センサー融合」「サイバーや宇宙やEWを重視」「航続距離や搭載量アップを重視」「爆撃機開発のような」「革新的推進力システムや自立化追及」「ステルスコーティングは全体には求めないかも」(末尾の関連過去記事を参考に)・・・と伝えられていますが、細部は不明です
PCA要求性能固めの山は2017年~2018年とも言われ、2019年度予算が550億円、今後も2020年度は1600億円、2022年には3300億円の開発予算が予定されているプロジェクトですが、米空軍幹部の発言も2017年夏を最後に最近ほとんどなく、2018年春にACC司令官が「秋には戦闘機ロードマップ」を公表予定と発言したものの、冬になっても音沙汰無しの状況です
中国やロシアへの情報流出を恐れ、新兵器開発に関する発言は最近抑制されているようですが、同時に、遅延と経費超過で悪名の高いF-35計画への酷評や、国防予算の厳しい現状(トランプ大統領の曖昧な態度も)から、余程各方面に納得される構想を出さないと耐えられない現実から、性能とコストのトレードオフ検討も含め、米空軍も慎重に進めているのだと推察いたします
また状況を複雑にする要因として、ほとんど同時に進み2019年には要求性能を固めようとしているらしい米海軍のFA-18後継機検討があります。こちらも次期SSBNや空母の価格高騰から「無い袖は振れない状態」ながら、FA-18酷使による稼働率低下や維持費高騰問題は待ったなし状態です。
加えて議会などから、なるべ空軍PCA共通化できる部分は共有してコスト削減をとか、情報を共有して開発コストとリスクの低減をとか当然言われ、多次元パズルの様相を呈し、基本的に海空軍は形だけ協力でお茶を濁すつもりの様ですが、海軍次期艦載戦闘機も音沙汰無し状態が2年ほど続いています
そんな中、初のPCA価格見積もりを出した議会予算室CBOのお話を伺いましょう
14日付Defense-News記事によれば
●CBOの見積もりは、米空軍がPCAをF-15C/DやF-22の後継として414機製造するとの前提で、2030年代に部隊配備されるとの空軍計画もとに行われた
●PCAは中露等の濃密で高性能な対空防御網を相手に想定し、F-22クラスより大きな航続距離と兵器搭載量、更に優れたステルス性とセンサー能力を目指しており、その要求レベルの高さからコストを抑えることは極めて難しいとCBOは指摘している
●これは、B-2爆撃機やF-22戦闘機が高価になりすぎ、当初計画通りの機数を製造できなかった過去の歴史や、F-35開発の遅れや価格高騰からも言えることであるとCBOは説明している
●仮にPCA計画を進めれば、仮に国防省が何らかの経費平準化施策を打ったとしても、米空軍の航空機への投資は現在レベルより多くなり、2020年代で15 billion、30年代で23 billion(ピークは2033年の26)、40年代で15 billionと高いレベルで推移する。そしてこれら航空機投資の半分を占めるのが戦闘機やPCAとなる
●米空軍はB-21爆撃機やKC-46空中給油機計画を同時に進め、核兵器の近代化も差し迫った課題である。更に、次期練習機T-Xや超超音速兵器や強靭なC2システム構築 や電子戦能力のてこ入れもあと送りが限界である
●CBOは経費抑制策にも言及しているが、 どれも完全なものはなく課題を秘めており、飛行隊数を現在の312個から386個へ増強することなど到底困難に思える。
●経費抑制策の一つとしてCBOは、PCAやF-35納入ペースや時期を遅らせ、F-16やF-15を延命することを検討しているが、部品枯渇や部品調達価格高騰は避けられず、維持できる機数は削減せざるを得ない
●逆に第4世代機を早期に引退させ、維持経費を削減して新型機導入を促進する考え方もあるが、これでは新型機購入経費が膨らんで経費的に耐えがたい。折衷案のPCAやF-35計画を遅らせ、第4世代機の一部を早期退役させる策もありうる
●また米空軍が検討している軽攻撃機導入で、高価で維持費もかさむ本格戦闘機関連の負担を軽減する方法もあるが、トータルの戦闘力低下につながる。どの選択肢も問題を抱えている
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PCA価格330億円の根拠は明確ではありませんが、現在の戦闘機より大型になることが想定されることから、それ相応の見積もり計算があるのでしょう
それにしても米空軍の戦闘機命派もしぶといですねぇ・・・・。こんな事だから、宇宙分野を空軍から切り離して予算の優先度を上げろなどと議会や大統領から言われるんです・・・・
それにしても、秋に発表になるはずの戦闘機ロードマップはどうなったんでしょうか???
それから、日本の国産戦闘機とか言っているものとの発想の違いは、どこから来るんでしょうか?
米空軍の次世代制空機検討PCA
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28
独と仏で共同開発へ
「仏独中心に次世代戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
既に発表された爆撃機計画
「Bomber Vector」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2