トルコにF-35を渡すのか
トルコが供給予定のF-35部品はどうなるのか?
25日、トルコのHulusi Akar国防相が、米国をはじめとするNATO諸国の大反対を押し切り昨年12月にロシアと契約した高性能地対空ミサイルシステムS-400の今後について語り、2019年10月にトルコ国内に配備予定だと明らかにしました
NATOの中東正面にある重要な位置づけにあるトルコが、トルコ自身の防空をNATO諸国の防空システムに依存してながら、NATOシステムと連接不可能なロシア製の防空システムを導入するとの暴挙に、米国は怒り心頭で、米議会は共同開発国であるトルコへのF-35引き渡し凍結(2機が米国内でトルコ人操縦者養成訓練に使用中:計100機購入予定)を決定してます
一方で米国防省の立場は極めて微妙で、マティス長官などは、F-35部品のサプライチェーンを構成するトルコがF-35計画から抜ければ、「F-35生産に穴が開き、50-75機の機体製造に遅れが生じ、部品調達の正常化に1.5年から2年を要する」と訴え、トルコへのF-35提供を許容したい意向も示しています
ただ、米空軍長官などは、「F-35とS-400が近接した距離に存在する様になることが、最大の懸念事項だ」と表現し、ステルス性や各種最新アビオニクスを搭載したF-35が、S-400の近くを日常的に飛行する事になれば、F-35の機密情報がロシア等に流出することに繋がる事を恐れています
反サウジのジャーナリストがトルコのサウジ領事館で殺害されたらしい事件も絡み、トルコと米国の関係は複雑さを増しており、S-400が配備される2019年10月まで、まだまだゴタゴタありそうな本件の現状をご紹介します
26日付Defense-News記事によれば
●トルコのAkar 国防相は、ロシアと購入契約を結んだ1個セットのS-400システムに関し、2019年10月にトルコ国内に配備すると発表した。そしてS-400導入はスケジュール通りに進んでいると表現し、今はS-400運用要員の選定を進めていると説明した
●また配備の際は、NATO防空システムとの連接機能がないことから、独立してスタンドアロンの形で配置し、敵味方識別装置IFFは、トルコ企業独自開発のシステムにトルコが独自の識別情報を入力して使用すると明らかにした
●同国防相は、どこからの脅威か明らかにせず、トルコはミサイル脅威に直面しているとS-400導入の必要性を説明した
●またS-400選定の経緯に関し、「米国や仏伊サプライヤーとも防空システムオプションについて過去協議を行ったが、期待するような提案は得られなかった」と語り、Patriot system や Eurosam (SAMP/T system)との交渉を振り返った
●一方で、2つのトルコ国内企業が引き続きEurosamと、トルコ防空システムの開発と共同生産について協議を続けているとも言及した
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このトルコの防空ミサイル選定は紆余曲折の経緯です。
2013年から15年の間は中国企業との契約間近と報じられてきましたが、2017年に入るとロシアのS-400を追及との話が現れ、最初は共同生産を追及したり、より最新のS-500で交渉したり、間には米国パトリオット企業とも交渉と報道されましたが、2017年12月には共同生産はあきらめ、S-400購入契約を2800億円で結んで落ちた形になっています
国内産業育成と技術導入も追及し、世界の企業や国と交渉する巧みさのある国ですから、今もいろいろな思惑があるのでしょうが、S-400を1セット買って単独で運用することに意味があるのか疑問です。
政争の具となっているのなら軍がかわいそうですが、NATOや米国も振り上げあこぶしをどうするのか・・・興味深いところです
トルコの防空ミサイル購入問題
「マティス長官がトルコF-35を擁護」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-24
「6月に1番機がトルコに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-15
「露製武器購入を見逃して」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28-1
「連接しないとの言い訳?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-30
「トルコ大統領が言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14
「ロシア製S-400購入の動き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23