5月31日、統合参謀本部のJ-5(戦略計画部長)を務めるKenneth McKenzie中将が国防省での記者会見で、中国が南シナ海で人工島を造成し軍事拠点化を進めていることに関し「米国は第二次大戦で(西太平洋にある)数々の小さな孤島をせん滅・陥落させてきた経験がある。それが米軍のコアとなる能力だ」と表現しました。
記者団からの中国への対応策に関する質問に回答する中で述べたもので、「単なる歴史的事実」でそれ以上の意味はないとすぐさま自身でフォローしたようですが、6月1日からのアジア安全保障会議直前のこのタイミングで出た発言に注目が集まっています
統合参謀本部のJ-5部長は軍と政治との接点を担う重要ポストであり、その場の思い付きで口が滑った発言とは思えませんし、それなりに思いを込めた発言と思われます。
折しも、米国防省が中国をRIMPAC2018に招待しないと28日に発表し、30日にはシンガポールでのアジア安全保障会議に向かう途上のマティス国防長官が中国の南シナ海での行動に対峙すると発言して中国外務省が反発する中での出来事ですので、ご紹介しておきます
5月31日付Military.com記事によれば
●31日、McKenzie中将は記者団の質問に答え、中国が南シナ海で人工島を造成し軍事拠点化を進めていることに関し「米国は第二次大戦で数々の小さな孤島を陥落させてきた経験がある。それが米軍の中核的能力だ」と述べ、中国を牽制した
●同中将はこの発言の際、脅そうとの意図はないし、単なる歴史的事実を述べただけでそれ以上の意味はないとも補足している
●28日に米国防省が中国をRIMPAC2018に招待しないと発表し、更にトランプ大統領就任後6回目の「航行の自由」作戦を行い、30日にはマティス国防長官が中国の南シナ海での行動に対峙すると発言した
●中国外務省の報道官は、恐らくマティス長官の発言を意識し、「米国人が南シナ海の軍事化と騒ぎ立てるのは不合理なことで、泥棒が窃盗をやめろと叫んでいるようなものだ」、「中国は南シナ海に大きな兵器を持ち込んだ最初の国ではないし、同地域で大規模な軍事活動を行った最初の国ではない。誰が南シナ海の軍事化を進めているのか。答えは明らかだ」と反論している
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McKenzie中将の発言に関し産経新聞は、「旧日本軍が守備していた南洋諸島の島々を米軍が「飛び石作戦」で次々と占領し、日本本土に迫った戦史を踏まえたものだ」と説明しています。確かにそうかもしれません
5月28日にRIMPACに中国を招待しないと米国防省が発表した際、これは「initial response」だと表現していましたが、これらの発言や「航行の自由作戦」が第2第3の対応なのでしょうか・・・
6月12日の米朝首脳会談の動向に注目が集まっていますが、米中にも引き続き注目する必要がありましょう
関連の記事
「アジア安全保障会議2018」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-2
「RIMPACに中国招待せず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-24
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