下士官パイロットの役割拡大は考えず!?

パイロット流出防止に搭乗員の業務軽減を徹底検討
海外ポストや海外訓練の削減も
wilson-Gold.jpg4日と17日、Wilson米空軍長官とGoldfein空軍参謀総長がインタビューや上院軍事予算小委員会で操縦者の流出防止策とその予算確保に理解を求めました。
何度もご紹介しているように、米空軍は約2000名の操縦者不足を招いているパイロットの流出(主に民間航空会社への流出)防止に種々の対策を検討&実施しており、約70の施策を打ち出して予算化を要望しています
空軍長官と参謀総長は決してパイロットを引き抜く民間航空会社を公に非難しませんが、何度も引き抜きの事実を語ることで、世論に民間航空会社批判が高まることを明らかに期待しているように思います
ボーナスを増やして確保したり、勤務負担を軽減したり、パイロット以外の空軍兵士がどう感じているのかとても気になりますが、そのあたりの情報がなかなか外に出てきません。とても気になります
4日空軍長官はMilitary.comに対し
wilson7.jpg下士官操縦者の役割拡大に関するRAND研究所による調査レポートを精査中であるが、現在配置しているグローバルホーク無人機の操縦以上に任務を拡大する計画はない
●WW2当時のように下士官の操縦者任務を拡大するよう要望する意見を多く聞くが、米空軍は操縦者を希望する兵士の不足に直面している訳ではない。問題は操縦資格を得てから10~12年後に迎える契約延長時の残留率の低下である
●民間航空会社は年間4500名の操縦者を採用しているが、民間会社は経験豊富な軍人パイロットを欲しがるのだ。そして(軍人操縦者を確保するため)、軍人操縦者なら飛行経験750時間で採用するのに、その他の人材には1500時間の経験を求めている
空軍パイロットは多くの場合、民間会社の給与レベルや生活の平穏に惹かれている。この傾向は過去から継続しており、民間会社が求人に力を入れると、空軍の残留率は低下する
●しかし、ボーナスの確保が残留率確保の魔法の杖ではなく、空軍は約70の採用、訓練、緩和施策を進めようとしている。
wilson8.jpg●例えばGoldfein参謀総長は、中東地域での作戦司令部があるカタールのアルウデイド基地勤務の操縦者ポスト見直しを指示し、削減や米本土に移管できないか検討させ、125ポストの削減に結び付けている
●また、その仕事は本当にパイロットがやる必要があるのか、他の職種の兵士でも可能ではないか、1年間の派遣を半年単位に分割できないか等の問いを重ねてパイロット配置の見直しを行っている
●更に各飛行部隊でパイロットが行っている付加業務も精査し、61業務から21業務を削減することにしている。また訓練項目の精査も行い、必要性の高くない訓練削減も進めている。操縦者は操縦席で任務を行ってほしいのであり、その他には柔軟性を持って対応している
空軍参謀総長が操縦者引き留め策予算を要望
Goldfein9.jpg●17日、上院軍事予算小委員会でGoldfein参謀総長は、現在の空軍パイロットの標準飛行時間17時間を21時間に引き上げる予算確保を訴え、「空軍パイロットは飛ぶために入隊したのだ:Pilots join to fly この予算要求は空軍パイロットを空に戻すためだ」と訴えた
●また空軍操縦者の「生活の質」を改善して空軍内で引き留めるため、家族から離れて他基地等へ展開する期間の削減や、訓練で遠方に展開する事に関して真の必要性を精査することを各部隊に指示している
●特に身体的・精神的に負担の大きい戦闘機や特殊部隊の心身の消耗を軽減するため、搭乗員30名に対し1名の心理療法士や体力トレーナーを契約して配置することを予算要求している。要員を確保するため、組織の文化として耐えることを伝統とする気風の中でも、先行的に手を打って搭乗員の心身の健康を保つことを目指している
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Wilson_Goldfein.jpg揚げ足を取りたくありませんが、これら幹部の公式発言を聞いた他の職域の兵士たちは、どう思うのでしょうか? 「空軍パイロットは飛ぶために入隊したのだ:Pilots join to fly」・・・米空軍のトップが口にすべき言葉でしょうか?
操縦者の流出を防ぐためなら、任務や訓練の犠牲もやむを得ないところにまで踏み込んでいるようにも見えます。しかも操縦者にだけ
最近、米空軍機の事故が急増していますが人間の勘として、このあたりの組織の変質や一体感の喪失が、事故の背景あるような気がしてなりません
先日のシリア化学兵器施設攻撃後の米軍発表で、当初は戦闘機の参加が含まれていませんでしたが、あとから追加でF-22が空中待機していたと訂正がありました。
存在意義が問われ始めている戦闘機族が大騒ぎしたんだと思います・・・。俺たちが守ってやってたんだと・・・。往生際が悪いですねぇ・・・
米空軍パイロット不足関連
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20
「トップが操縦者不足と軽攻撃機を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-17
「18年ぶり飛行手当増額」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-28
「戦闘機パイロット2割不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22
「航空業界は今後20年人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29

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