フィッツジェラルドは米本国で修理も、マッケインは優秀な横須賀の施設で修理へ
4日、米太平洋艦隊司令部は、8月21日にシンガポール沖でタンカーと衝突事故を起こしたイージス艦USS John S. McCain (DDG-56)の修理を、日本の横須賀基地で行うと発表しました。
現在シンガポール港に係留されている同艦艇に対する修理見積の結果、コストや運用再開までの期間、更に搭乗員の訓練等を総合的に勘案し、横須賀での修理が最適と判断されたそうです。
一方で、6月17日に日本の沖合で商船と衝突事故を起こしたUSS Fitzgerald (DDG-62)は現在横須賀に係留中ですが、より衝突の被害が大きいため、12月にミシシッピ州の造船所に輸送されて修理を行う模様です。
もちろん、McCainとFitzgeraldの間には被害の大きさに差があるのでしょうが、アメリカ国外では唯一空母の母港として機能している横須賀基地の海軍修理施設を優秀さをあらためて示すことになりました。
ここで重要なのは、米海軍の修理施設といえども、修理最前線の作業を担っているのは米軍に雇用されている日本人だということです。
4日付米海軍協会web記事によれば
●米太平洋艦隊は米海軍協会に対し、「既に米海軍の前方展開海軍の拠点である横須賀で修理を行うことは、艦艇の乗員とその家族に対しても、安定と継続性を提供できる」との理由も説明している
●また米太平洋艦隊は、「艦艇修理に加え、第7艦隊内で、乗員の任務復帰に向けた訓練や資格維持に集中できる」とも説明している
●イージス艦マケインへの被害は大きかったが、被害の大部分が乗員の居住区域と機械室であり、電気系統にほとんど被害がなかったこともこの決定に影響している
●米海軍協会が入手した情報によれば、米海軍は同艦の修理費を約250億円と見積もり、約1年間必要と考えている模様
●米海軍は、同艦艇を10月末までに「heavy-lift transport」により横須賀に移送する準備を進めている
●イージス艦McCainとFitzgeraldは、ともに空母ロナルド・レーガン空母戦闘群を構成する艦艇で、ミサイル防衛能力を提供する艦艇である
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米海軍の横須賀基地内には大型艦船用ドックがあり、各艦艇の日々の点検及び修理業務は横須賀基地内で行われます。
横須賀基地が機能しなければ、艦船の点検及び修理などは往復におよそ半月から1か月を要するハワイ・オアフ島の真珠湾、またはアメリカ本土の基地内の修理施設で行う必要があるため、米海軍の西太平洋でのプレゼンスを示すには、横須賀基地の修理能力は欠かせません
更に・・・弾薬の補給(トマホークとかSM-3とか)の観点からしても、極めて重要と言わざるを得ません。
1865年に江戸幕府により設立された横須賀製鉄所を基に、1871年に横須賀造船所として設立され、その後1903年以降は大日本帝国海軍により横須賀海軍工廠として利用されていますが、ドックの中には幕末に建設された日本最古でありながら、いまだ現役で使用されている施設もあるようです。
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