外国首脳と初のホワイトハウス夕食会
痛いところにあまり突っ込まず友好を軽く演出
パキスタンや環境パリ協定に触れず、記者質問も受けず
25日から26日にかけインドのモディ首相がワシントンを訪問し、25日には外国首脳として初のホワイトハウス夕食会、26日はトランプ大統領と会談しました。オバマ政権時代に3回訪米したインド首相ですが、トランプ政権後は初の訪米です
全般に米メディアによれば、まだアジア太平洋での立ち位置が定まっていない米国政権も、内外に諸問題を抱えるインドも、以前の3回のインド首相訪米と比較し「low-key」だったとの評価ですが、双方に良い関係を模索しつつ、主張を今後持ち出したいとの思惑もみえる会談だったようです
米国側はインド首相到着の数時間前に、国務省がパキスタンのテロ組織「Hizbul Mujahideen」のリーダー「Syed Salahuddin」への制裁措置を発表し、会談前にC-17輸送機の輸出許可や、総額2000億円以上の無人海洋偵察機「Guardian」22機の取引推進を明らかにし、首脳会談の環境作りに配慮しています
首脳会談の主要ポイント
●会談後ホワイトハウスの庭に登場した両首脳は、2回もハグしてより緊密になりつつある関係をアピールした。2日間の滞在だったが、両首脳が対話する時間は十分に確保された
●対テロに関しては、トランプ大統領はパキスタンとの言葉は使用せず、「両国ともテロの被害を受けており、テロと過激思想の撲滅の決意を固めている。我々は過激なイスラムテロを撲滅する」と表現した
●一方で1.8億人のイスラム教徒を国内に抱え、パキスタンを根拠とする過激派を警戒するモディ首相も直接パキスタンには言及せず、更に「イスラム」との言葉も使用せず、テロリストの聖域や安住の地を根絶する重要性を語り、米国との情報共有を強化すると表現した
●中国に関して両国は懸念を示しており、過去10年間の米印の関係改善はこの要因が大きいが、現時点でトランプ政権は中国を北朝鮮対策の重要な関係国としてしか具体的な動きを示しておらず、米印鑑の具体的な協議内容は不明
●インドが2001年以降に総額3000億円を超えるアフガニスタン支援を行っていることも取り上げられ、両国がアフガンに共通の利害を持っていることも確認された
●「America First」と米国内雇用確保を掲げるトランプ大統領と、「Make in India」を推進するインド首相は、経済関係面で難しい関係にある。特に米側は約3兆円もの対インド貿易赤字を抱え、またインド人技術者への米国ビザ発行も問題も検討課題に挙げている
●米大統領は会談後インド首相の前で、「インド市場への米国製品の輸出障壁を取り除くことが重要だ。そのことで対インド貿易赤字を削減する」と明確に述べている
●一方で、米大統領はインド首相の経済運営を讃え、モディ首相もトランプ大統領やその家族のビジネスマンとしての業績をたたえ、米大統領の指導力が両国関係の「積極的で未来志向の」発展に寄与すると表現し、米大統領をインドに招待すると語っている
●しかし、インドが厳しく非難している米国のパリ協定脱退については、両国首脳とも言及を避けた
軍事協力はまだまだ初期段階か
●2016年後半にインド側が米側に要望していた海洋監視無人機「Guardian」は、オバマ政権が次期政権に判断を委ねることにした案件である。
●この他にもインドは米国製無人機を希望しており、その中には無人攻撃機も含まれている。しかし攻撃型無人機の売却は、有志連合を組むレベルの同盟国だけに認めており、これをインドに許可することは「大きな政策変更」を伴うモノと専門家は指摘している。
●インド国防省関係者は匿名で、今回の首脳会談でトランプ大統領は、戦略的な問題に関する重い課題の議論を避け、経済問題を重視していたと語っており、この様な米国の姿勢を受け、インドはイスラエル製の攻撃型無人機の検討も進めるとも明らかにした
●米印間の国防関係は、米がインドに兵器を売却する関係(これまでの総額約1.7兆円)だが、インド側はこれを共同開発レベルにしたいと考えている。この枠組みがオバマ政権時代に結ばれたDTTI(Defence Technology and Trade Initiative)であるが、具体的な共同開発計画に至っていない
●オバマ政権時代は、カーター長官が盛んに訪印してDTTI関連協議が行われたが、今回の首脳会談ではDTTI関連議論はなかった。
●モディ首相は会談後に「トランプ大統領と2国間の国防技術協力強化について議論した」と発言したが、第4世代機であるF-16のインド国内製造レベルに議論が限定され、全ての高価値部品が米国製で占められることから、インド側の技術獲得希望からは大きく離れている
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米国側は、依然として国防省や国務省の政治任用ポストに「大量の空席」があり、新たな政策や方針を打ち出せる段階にはありません。とりあえず首脳会談を行い、時間を稼いでいる感じでしょうか・・・
トランプ大統領は「America First」を主張する姿勢を、モディ首相も「Make in India」で受けて立ち姿勢をメディアの前でアピールし、「イスラムやパキスタン」への表現に配慮しつつ対テロ協力を打ち出し、相違が大きいパリ協定については触れずの姿勢で、国内の支持率が気になる両首脳の外交得点稼ぎに貢献した会談と理解しておきます
対中国の部分が気になるので、他に関連報道が出たら追記します。たぶん・・・
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