FBI長官解任で急速に旗色が悪くなりつつあるトランプ大統領ですが、国防関連の施策2つに関し、有力上院議員から相次いで抗議を受けていますのでご紹介します
一つは、昨年10月以来、南シナ海での中国の埋め立て基地建設に対処する「航行の自由作戦」を中断していることに関する抗議で、もう一つは、サイバー政策を検討する基礎となる種々の報告を政府機関に求める等の「サイバー関連の大統領令」への「何をいまさら。行動すべき時だ」抗議です
国防関連で重要なテーマである、対中国と対サイバー戦に関する問題を凝縮したような2つの抗議ですので、米国の現状を考える契機として取り上げます
昨年10月から中断の「航行の自由作戦」を再開せよ
●10日、超党派の7名の上院議員がトランプ大統領に対し、2016年10月以来「航行の自由作戦」が中断している現状に懸念を表明する書簡を出した。
●同書簡の起案はBob Corker (R-Tenn.)とBen Cardin (D-Md.)上院議員で、この趣旨に同意する4名の民主党上院議員と3名の共和党上院議員が署名する形で発出されている
●同書簡はハリス太平洋軍司令官の議会証言を引用し、現状認識として、
—中国による南シナ海の軍事基地化は現実の問題となっている
—南シナ海は米国戦略上きわめて重要で、全世界の海洋交通の約3割が通過し、140兆円相当の米国向け海運物資が含まれている
●米国は南シナ海における主権問題に特定の立場をとらない姿勢であるが、中国による一連の攻勢的行動は、「航行の自由作戦」がアジア太平洋地域での航海と飛行の自由を守る米国の広範な戦略の重要要素であることを際立たせている
●トランプ大統領は、定期的に航行の自由作戦行うための必要な措置を行うべき
調査は十分。サイバー政策、戦略、資源投入が必要
●11日にトランプ大統領はサイバーに関する大統領令に署名し、国防省を含む政府機関に種々の見積もりや現状把握のための報告を求め、国防省には7つの新レポートを求めた
●大きなものでは、大統領は国防省等に、政府機関が統合したネットワークに移行し、共通のメール、クラウド、セキュリティーサービスを利用する可能性に関する見解を求めている
●また国防省に対しては、国防インフラや軍需産業へのサイバー攻撃状況、サイバー抑止やサイバー施策の優先、米国のサイバー優位のための施策提言を求めている
●この大統領令にをマケイン上院議員は直ちに非難し、「米国が直面しているサイバー関連の課題や問題は、すでに種々の文書にまとめられている」「これ以上の分析やレビューや見積もりは不要だ」との声明を発した
●そして上院軍事委員長である同議員は、「米国に必要なのは、サイバーに関する政策、戦略、そしてそれらを実行する資源投資である」、「このような報告書など早期に仕上げ、国防省リーダーが我が国へのサイバー攻撃に対処し、防御し、抑止し、戦略を練る喫緊の業務に向かわせるべきだ」と訴えた
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ハリス司令官が「航行の自由作戦」を上申しても、ホワイトハウスが却下していると報道されたり、中国がハリス司令官の解任を要求していると報道が出たりしてますが、昨年10月から同作戦が中断している現状からすれば、そうなのかなぁ・・・と寂しい気分になります。
サイバー対処は単純でない難しい課題ですが、マケイン議員のご指摘はその通りでしょう。課題や問題の把握は十分。必要なのは行動だ・・・ということでしょう。
ところで・・・ここ最近は北朝鮮の話題一色ですが、中国はその隙にしっかりと南シナ海と尖閣諸島で「既成事実」を積み上げており、尖閣周辺での「施政権」は着実に侵されています。
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