4月17日、F-15を製造維持するボーイング社の同機担当副社長が、Defense-Newsのインタビューを受け、米空軍幹部が盛んに言及するようになったF-15C/D退役案を厳しくけん制しました。
同副社長の主張は、F-15の高い能力、既に延命措置を一部機体に開始しており税金の無駄、延命&能力向上オプションには多様な価格の選択肢があり慎重な検討が必要などです。
また別の視点でDefense-Newsは、F-15退役策がライバルであるF-16とF-35製造のロッキード独り勝ちを招き、軍需産業政策上の問題になることも示唆し、政治レベルの寝技抗争に持ち込む可能性をにおわせています
21日付Defense-News記事によれば
●ボーイングのF-15担当副社長であるSteve Parker氏は、米空軍が制空用F-15C等の退役検討について、すでに2030年代まで使用可能にする延命策を開始している中で困惑している様子を示した
●同副社長は、同機の縦型構造材(longerons)を1機1億円で交換するだけで、2030年代まで延命させることも可能だと説明し、「納税者視点でも費用対効果のオプションであり、米空軍が戦力不足を訴える中、周知のF-15能力を提供できる」と訴えた
●米空軍軍側は、例えば調達担当のArnold Bunch中将が「老朽作戦機を考えるとき、予算をかけて改修しても、それほど延命できないのであれば改修に値しない」と述べ、新ACC司令官が1機30~40億円の延命策の採否を検討する必要があると語っている
●しかしこの金額は最も包括的で高価な改修案で、ボーイング社には他の改修オプションもあると同副社長は語った
●また副社長は、延命改修の一部である同機の縦型構造材(longerons)交換は既に米空軍により開始されており、飛行時間8800時間時点で確認実施され、2026年まで実施されることになっているとも明らかにした
●更に副社長は、F-15がF-16より優れていると主張し、「より早く、より多く搭載し、より遠くで活動でき、長時間空中待機が可能である」と語った。そして「なぜF-16に小さなAESAレーダーを搭載するのか? すでにF-15に搭載した改修費用はどうなるのだ?」と訴えた
●なおボーイング社は来年から、米空軍F-15の 新型電子戦システムであるEPAWSS(Eagle Passive/Active Warning and Survivability Syst)の飛行試験を開始することになっており、また2か月以内に最初の新型演算処理装置を搭載コンピュータに提供開始することになっている
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米空軍はこの副社長の指摘を十分承知しながらも、F-15退役を検討しているのだと思いますが、F-15退役策がF-16とF-35製造のロッキード独り勝ちを招き、軍需産業政策上の問題になる可能性は重い話で、軍事の世界を離れた紆余曲折もありえる課題となりそうです
繰り返しになりますが、日本にとって米空軍F-15Cの退役は、兄弟機である航空自衛隊が約200機保有するF-15J戦闘機の「維持」に直結しかねない問題でアリ、「America First」で「Buy American」主張前面押し出しのトランプ政権を考えれば、他の日本の産業を守るため国防装備購入で妥協する可能性の高さを思えば、「F-35の追加押し売り」にも容易に発展する事態です
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